⑩2020年(勝ち馬グランアレグリア)
レッドファルクスの連覇から3年が経った2020年。この年はまた、出走馬の序列が難しい中でのレースとなった。
その伏線は春にさかのぼって、同年の高松宮記念。当日の朝まで降った雨が残り、重馬場で行われた一戦は、ゴール前4頭による激戦の末、単勝15番人気の伏兵クリノガウディーが1位で入線したが、すぐに審議となる。17分に及ぶ長い審議の結果、2位入線のモズスーパーフレアと4位入線のダイアトニックの走行を妨害したとして、クリノガウディーは4着に降着。
1着モズスーパーフレア、2着グランアレグリア、3着ダイアトニック、4着クリノガウディーで確定した。これは2013年の降着ルール変更以降初となる、G1勝ち馬の降着となった。この大接戦を演じた4頭が揃って出走したのが、スプリンターズSであった。
1番人気はグランアレグリア。高松宮記念2着の後は、安田記念でアーモンドアイを倒して2つ目のG1タイトルを獲得していた。
2番人気は高松宮記念覇者のモズスーパーフレア。直前の北九州記念では、牝馬ながら56.5キロを背負って2着に粘り込んでいた。
高松宮記念3着のダイアトニックは5番人気、高松宮記念4着のクリノガウディーは9番人気でレースを迎えた。
高松宮記念同様、モズスーパーフレアがハナを切る展開。しかしこちらもハナを切りたいビアンフェと競る形となり、前半600mの通過は32秒7というハイペース。そのまま残り150mまで先頭を守ったモズスーパーフレアだが、ハイペースがたたって失速。
変わって先頭に立ったミスターメロディを目標にダノンスマッシュが伸びるが、それらを一瞬で交わし去ったのが、グランアレグリア。道中15番手追走から、直線だけでごぼう抜きを見せた。
クリノガウディーは後方から脚を使うも5着。逃げたモズスーパーフレアは10着。中団からレースを進めたダイアトニックは伸び切れず13着に敗れた。
マイルだけでなくスプリントG1のタイトルも獲得したグランアレグリア。この勝利を足掛かりにして、翌年の3階級制覇挑戦へと向かっていくのであった。
(文●中西友馬)