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Calstone Light O
第38回スプリンターズSを制したときのカルストンライトオ

⑤2004年(勝ち馬カルストンライトオ)

 秋の最速馬決定戦という位置づけになってから5年目となった2004年。この年の主役は、まさに韋駄天という言葉がぴったりのカルストンライトオだった。

 現在JRAで施行されているレースの中で最も短い距離は1000m。その芝1000mの日本レコードを持っているのがカルストンライトオである。まさに日本史上最速の馬ということになる。

 そのレコードタイムが記録されたのが、2002年のアイビスサマーダッシュ。8枠12番のゲートを出てから先頭を譲ることなく、外ラチ沿いを逃げ切ったタイムは53秒7。まさに影をも踏ませぬ走りであった。

 しかし日本最速の名を手に入れたものの、その後重賞タイトルにはなかなか手が届かなかった。

 そして久々の重賞制覇となったのが、2004年のアイビスサマーダッシュ。この年に引いた枠は有利とされる外枠ではなく、5枠5番。それでもスタートダッシュを決めるとすぐに外ラチ沿いに寄せてハナを奪取。あとは2年前と同じく後続になにもさせずに逃げ切って、重賞2勝目を飾った。

 その直後に挑戦したのが、スプリンターズSであった。しかし重賞を快勝して挑んだにも関わらず、世間の評価は単勝5番人気という、あまり高いものではなかった。その理由が、アイビスサマーダッシュの特殊さによるものであったことは明白であった。

 アイビスサマーダッシュは新潟競馬場の名物レースで、JRAの重賞で唯一、直線1000mのコースで行われる。そのため、千直巧者というものが生まれやすく、アイビスサマーダッシュ以外に重賞勝利のないカルストンライトオも、その部類だという評価をするファンが多かった。

 しかしスピードの違いでハナを切ると、雨の降る不良馬場でも軽快に飛ばし、前半600mは良馬場のレースとさほど変わらない33秒6で通過。そのペースについてきた先行勢が軒並み失速していき、直線は独走状態。後方から追い込んできた前年覇者デュランダルに4馬身の差をつけてゴールに飛び込んだ。

 カルストンライトオが千直巧者であることは疑いようがないが、それがG1を勝てない理由にはならない。雨中の中山で見せた独走劇には、自分が日本最速の馬だというプライドを感じた。

(文●中西友馬)

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