元々OP特別として産声をあげたときは芝の短距離レース。重賞への格上げと同時にダートの短距離レースとなり、現在はダートの中距離レースで行われているシリウスS。今はG1チャンピオンズカップの前哨戦としても重要な位置付けを担っているこのレースは、ダート短距離だった時代も含め、さまざまな名勝負が繰り広げられてきた。今回はその中から、5つのレースを取り上げて紹介する。

①2001年(勝ち馬ブロードアピール)

　1つ目は、重賞格付け5年目の2001年。まだ阪神ダート1400mの短距離戦で行われていた。

　この年の主役は、印象的な追い込みレースで根岸Sの動画がたびたび取り上げられる、ブロードアピールであった。

　ブロードアピールは、デビューが5歳秋(現4歳秋)と遅かったが、デビュー戦から半年足らずで6勝を挙げてOP入り。この頃は芝短距離を主戦場としており、7歳(現6歳)となったシルクロードSで重賞初勝利。

　そんなブロードアピールの転機となったのが、前述した同年秋の根岸Sであった。それまでダートは2戦2勝であったが、ダートの重賞は初挑戦。そんな馬が見せた異次元の末脚に、ファンは度肝を抜かれたのだ。

　このレースがターニングポイントとなり、ここからはダート短距離を中心のレース選択となる。ここからさらに重賞タイトルを2つ手に入れて迎えたのが、シリウスSであった。

　この時の鞍上は、初騎乗となる四位騎手。ハンデ重賞らしく最軽量馬は51キロで、最も重いハンデを背負うブロードアピールは牝馬ながら57キロ。牡馬換算にすると59キロとなり、実質8キロの重量差がある、抜けたトップハンデであった。それでも重賞4勝の実績が評価され、単勝1.7倍の1番人気に推されていた。

　レースはいつものように後方から。3コーナー辺りから追い通しであったが、直線は馬群の大外に持ち出されると一完歩ごとに前との差を詰める。残り200mで2番人気のスターリングローズが先に抜け出すも、その外からトシザミカと
　
　ブロードアピールが併せ馬の形で伸びてきて、ゴール前は3頭での争い。

　この接戦を制したブロードアピールが、1番人気の支持に応えて勝利。上がり最速の35秒7は、レース上がりを1秒5も上回るものであった。

　その後翌年のガーネットSも制して、重賞6勝を挙げたブロードアピール。追い込み馬の代表として、今でもファンの記憶に強く刻み込まれている。