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【軽ハンデの下克上】 斤量50キロ以下…“空飛ぶ馬”たちの痛快フィニッシュ5連発!

text by 中川大河

「夏競馬は荒れる」というのは競馬界の格言の一つ。暑さに弱いサラブレッドにとって調整が難しい時期でもあり、人気馬が熱中症で惨敗なんていうこともよく聞くようになった。

ハンデ戦が多いことも夏競馬が荒れる要因の一つだ。現在行われているハンデ重賞は30近くあるが、その過半数がローカル開催だ。そしてその多くが夏の期間に組まれている。先月22日の府中牝馬Sを皮切りに、目下6週連続でハンデ重賞が開催中。先日の函館記念は10→6→14番人気の伏兵同士の決着で三連単の配当は69万円を超えた。

そこで今回は軽ハンデを生かして下克上を遂げた5頭を独断と偏見で選出した。条件は、2000年以降のハンデ重賞を50キロ以下の斤量で制した馬だ。

2008年マーメイドSを制したトーホウシャイン
2008年マーメイドSを制したトーホウシャイン

①トーホウシャイン×高野容輔(2008年マーメイドS)

~前走で自己条件惨敗から強豪撃破~

 
 トーホウシャインの父スペシャルウィークの産駒は、シーザリオやブエナビスタなど牝馬の活躍が目立った。JRAの平地重賞を制した牝駒は計6頭いたが、そのうちの1頭がトーホウシャインである。トーホウシャインは、3歳の3月にデビュー。そのレースで2着に入ったが、勝ち上がりには8戦を要した。初勝利は3歳夏の小倉。2勝目を挙げたのは、そのさらに1年後だった。

 しかし、1000万下(現2勝クラス)に昇級後は成績も停滞。掲示板がやっとというレースが続き、5歳6月の1000万下を9着に敗れて臨んだのが牝馬限定のハンデ重賞、マーメイドSだった。同レースには前年のオークスで惜しい2着に敗れたベッラレイアが出走した。1番人気に支持されたが、メンバートップタイの56キロのハンデを課されていた。トーホウシャインはブローオブサンダーとともに最軽量の48キロ。ベッラレイアとは実に8キロもの斤量差があった。

 トーホウシャインの鞍上を務めたのは、当時24歳の高野容輔騎手。主戦の川島信二騎手が斤量48キロでは騎乗できなかったため、高野騎手が自ら志願し、初コンビ結成が実現した。しかし、トーホウシャインは1600万下(現3勝クラス)のレースにも出走したことがなく、ファンの評価も最下位12番人気(単勝オッズ116.3倍)と低かった。それでも後方からレースを進めると、最後の直線で他馬を突き放す強い競馬。

 ベッラレイアのほか、前年の秋華賞で2着に入ったレインダンスや、前年覇者のソリッドプラチナムといった並み居る強豪牝馬を一蹴した。

 「今年まだ勝っていませんでしたし、この勝利はプレゼントですね」レース後、高野騎手がそう語った通り、これが6月にしてこの年の初勝利。平地・障害合わせて9度目の重賞挑戦で見事な大金星を手にした。勝ったトーホウシャインももちろん重賞初勝利。高野騎手にとっても、これが生涯で唯一の重賞制覇であった。

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