②クロフネ
性別:牡馬
父:フレンチデピュティ
母:ブルーアヴェニュー
生年月日:1998年3月31日
毛色:芦毛
調教師:松田国英(栗東)
アグネスデジタルが天皇賞・秋に出走を決めたことで、同レースを除外になってしまったのがクロフネ。当時、外国産馬は制度上、天皇賞への出走は賞金上位の2頭までしか許可されておらず、クロフネは上から3番目だったためである。しかし、この除外によって新たな伝説が作られるきっかけとなるのだから、運命とはわからないものだ。
2歳時から条件戦をレコードタイムで完勝し、年末の重賞ではアグネスタキオン、ジャングルポケットとともに「世紀の名勝負」を演じたクロフネ。翌春にはNHKマイルCを後方から1頭だけ次元の違う脚で差し切る脚を見せ、この年から外国産馬にも出走が認められた日本ダービーでも5着と善戦した。
そして陣営は秋初戦の神戸新聞杯を3着とした後、最後の一冠となる菊花賞ではなく、距離適性を考慮して天皇賞・秋へ向かうことを発表。テイエムオペラオーとメイショウドトウといった強豪2頭にどこまでの走りを見せてくれるかというところに注目が集まっていた。
しかし、そこにアグネスデジタルが急遽参戦したことで冒頭の事件が発生。賞金差はどう頑張ってもひっくり返ることはないため、アグネスデジタルが回避しない限り天皇賞の出走は叶わない。これを受けて陣営は「天皇賞に向けて仕上げたのに、レースを使わないのはもったいない」と考え、同週の武蔵野Sに出走を決めた。
迎えたレース当日、人気こそ1番人気だったが、2番人気のエンゲルグレーセとはわずかに0.5倍しか変わらないオッズ。芝のG1ホースとはいえ、いきなりダートの強豪を相手に勝負になるのかという疑念はやはりあったのだろう。だが、結果は9馬身差で1着。それも稍重馬場で記録された前のレコードタイムから1秒2も時計を縮める、当時の日本レコードのおまけつきでの圧勝だった。
次走のJCダートでは世界の強豪を相手に1.7倍の1番人気に推され、3コーナーで一気に進出。4コーナーを前にして抜け出すと、そのまま後続を突き放して7馬身差の圧勝劇を飾って見せた。その勝ちタイム2分5秒9は当時の世界レコードで、2025年7月現在も破られていない、東京ダート2100mの日本レコードである。同レースを最後に引退したクロフネだったが、ダート転向後の2戦での強さは、まさに「米国からの黒船襲来」と呼べるほどのものであった。