HOME » コラム » 5選 » イングランディーレなど後の天皇賞馬も輩出した金沢伝統の交流重賞【白山大賞典名勝負5選】 » ページ 3

③2007年(勝ち馬ビッグドン)

 イングランディーレの勝利から4年が経った2007年。この年の夏、競馬界を震撼させる非常事態が起きた。それが実に36年ぶりとなる、馬インフルエンザの流行であった。

 感染馬は美浦・栗東のトレセンだけにとどまらず、地方競馬でも陽性反応が確認された。その結果、開催中止や中央交流競走へのJRA所属馬の出走取りやめなど、多大な影響を受けることとなった。白山大賞典の行われる金沢競馬場も例外ではなく、開催自体は9月に入ってから再開されたが、10月に行われる白山大賞典は金沢所属馬限定のレースへと変更になった。

 そんな背景の中で行われた、2007年の白山大賞典。1番人気はビッグドン。元々中央のOPクラスに在籍していたこともあり、実績は断然。金沢移籍後も交流重賞に何度も出走しており、前年の白山大賞典では、JRA勢相手に2着と好走していた。そのため、金沢所属馬だけの戦いなら負けられないといったところであった。

 2番人気はマヤノオスカー。ビッグドン同様に元々中央所属ではあるが、中央時代は1勝止まり。OPクラス在籍のビッグドンほどの実績はなかった。この馬も前年の白山大賞典に出走予定であったが、除外の憂き目にあっていた。

 3番人気はサムソンリンリン。この馬は地方生え抜きの馬で、廃止となった高崎競馬出身。廃止に伴い金沢へと移籍し、A1まで上り詰めていた。A1に上がってからは2着8回となかなか勝てなかったが、A2に降級した前走で6馬身差の圧勝を飾り、勢いに乗っていた。

 この3頭までが単勝10倍を切る人気に推され、発走を迎えた。

 レースは、リュウヨウとシャインカイザーが並ぶようにしてハナを切る展開。ビッグドンは好位を確保し、サムソンリンリンはそのすぐ後ろにつける。マヤノオスカーは、序盤は後方集団から進めていた。レースが動いたのは2周目の3角手前。
 人気馬たちが上がっていき、前にいた2頭は早くも後退気味。ビッグドンが早くも先頭を奪い、その後ろにマヤノオスカーとサムソンリンリンが浮上して4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、地力に勝るビッグドンが後続を突き放して先頭。2番手争いも人気2頭に絞られ、その後ろは大きく離れた形となる。最後は5馬身の差をつけたビッグドンが勝利。2着には接戦を制したマヤノオスカーが入り、サムソンリンリンはクビ差の3着となった。

 勝ったビッグドンはその後も、馬インフルエンザによる移動禁止が解除された交流重賞に挑戦した。中央交流へと戻った翌年の白山大賞典にも連覇を目指して出走したが、アドマイヤスバルの7着に敗れ、JRA勢撃破での連覇達成とはならなかった。

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