HOME » コラム » 5選 » 90年代は伝説の名馬たちが制してきた伝統の一戦。3連覇した中山猛者も登場【オールカマー名勝負5選】 » ページ 5

Matsurida Gogh
オールカマー3連覇を達成したマツリダゴッホ

⑤2009年(勝ち馬マツリダゴッホ)

 サクラローレルの勝利から12年が経った、2009年のオールカマー。この年は、創設から54回目にして初となる、オールカマー連覇が達成された。

 達成したのはマツリダゴッホ。AJCC、オールカマー、有馬記念、日経賞と、重賞勝利は全て中山コースという生粋の中山巧者である。そんなマツリダゴッホが、もちろんこれも史上初となるオールカマー3連覇に挑んだのが、2009年のオールカマーであった。

 しかし、戦前の評価は単勝3番人気。前年のオールカマー以降、1年間で勝利はおろか、馬券圏内もゼロ。前年覇者として挑んだ有馬記念でも、ダイワスカーレットの12着に大敗していた。6歳シーズンを迎えて衰えを指摘する声も聞かれ始めたことに加え、過去2年と比較してメンバーレベルも高かったこともあり、3番人気に甘んじていた。

 1番人気は、直前の宝塚記念を制しているG1・2勝馬のドリームジャーニー。2番人気は、新潟大賞典、エプソムCと重賞連勝中のシンゲン。マツリダゴッホのコース適性の高さは認めるものの、厳しい戦いが予想される3番人気であった。

 レースは、まさかの大外枠からマツリダゴッホがハナを切り、エイシンデピュティが2番手を追走。デビュー25戦目にして初となる逃げの手に打って出たマツリダゴッホの姿に、観客からは驚きの声が上がっていた。シンゲンとドリームジャーニーは並んで中団を追走する形となり、前半1000mの通過は61秒0というスローペース。前の4〜5頭はバラバラの展開で馬群も縦長となっていたにも関わらず、ゆったりと流れていた。そのまま馬順が大きく変わることはなかったものの、全体的に馬群が凝縮して4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、マツリダゴッホのリードは2馬身。2番手に浮上したマンハッタンスカイが必死に追うも、逆に差が広がっていく。代わってその外から伸びてきたのが、ドリームジャーニー。その内から連れるようにしてシンゲンも伸びてきて、人気3頭の争いとなる。しかし、逃げるマツリダゴッホの脚色は衰えず、最後まで2馬身のリードをキープして勝利。激しい2着争いは外のドリームジャーニーが制し、アタマ差の3着がシンゲンとなった。

 勝ったマツリダゴッホは、史上初となるオールカマー3連覇を達成。重賞タイトルも、中山のみで6つ目となった。マツリダゴッホはその後、同年の有馬記念7着を最後に現役を引退。オールカマーには3年連続で出走し、負けなしのまま現役引退となった。

 このように、ひと昔前は中長距離の王道路線を進む馬たちにとって、秋初戦に選択することの多いレースであったオールカマー

 近年は少し傾向が変わってきており、夏の上がり馬の試金石など、これからG1を目指す馬たちのステップレースとなることが増えてきた。
 
 今年の出走馬にもG1馬はいないが、ここから飛躍を果たす馬が現れることに期待したい。

(文●中西友馬)

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