⑤2024年 レガレイラ
父:スワーヴリチャード
母:ロカ
生年月日:2021年4月12日
毛色:鹿毛
調教師:木村哲也(美浦)
これまでの牝馬のダービー挑戦には共通点がある。それが桜花賞敗退。それも2着に敗れての挑戦が多かった。だが、レガレイラはその共通項には当てはまらない。なにせダービーの前に牡馬相手にすでにGⅠを制していたからだ。
ホープフルSは皐月賞、ダービーへ向けた登竜門的立ち位置にある。それこそ舞台は皐月賞と同じ中山芝2000mであり、そのレース内容は牡馬クラシック戦線の図式を明確にする。レガレイラのホープフルS出走は中距離を目指す陣営の意図でもあった。さらに牡馬を向こうに回し、GⅠを制し、牡馬クラシック挑戦は現地味を帯びた。当初から皐月賞、ダービー挑戦を表明した牝馬はこれまでいない。
皐月賞では1番人気に支持され、前人未踏の挑戦にファンも期待した。しかし、陣営の計算はわずかに狂う。主戦のルメール騎手がドバイで落馬負傷し、北村宏司騎手に替わった。騎手としての実績云々以上に、乗り慣れた鞍上が乗れず、本番で実戦初騎乗という状況が痛かった。加えてメイショウタバルが暴走気味に飛ばし、スローだったホープフルSとは正反対の流れになり、レガレイラは追走に余裕がなかった。それでも4コーナー13番手という厳しい位置ながら、上がり最速の末脚をみせ、6着と東京なら巻き返せるという可能性を残した。
ファンの想いも同じく「負けて強し」。メイショウタバルの取消によって一転してスロー濃厚になった展開やルメール騎手の復帰もあり、皐月賞馬ジャスティンミラノに次ぐ2番人気。みんなホープフルSでの瞬発力が頭から離れなかった。絶好の内枠を引き当てたレガレイラは、中団のインで流れに乗る。明らかに追走に余裕があり、ペースはレガレイラのものだった。
しかし、スローを嫌った馬たちが外から早めに動き、後半1000m勝負の過酷な流れに一変した。内にいたレガレイラはペースアップに対応できず、さらに直線では目の前に牡馬の壁が立ちはだかる。進路を外に求め、スパートしつつ、横に移動する間に、先行勢はその差を広げていく。それでも残り200mでつけられた物理的な差を懸命に詰めていき、最後は5着に。レガレイラが皐月賞、ダービーで示した可能性は、7ヶ月後の有馬記念で証明されることになった。
【了】
(文●勝木淳)