④キタサンブラック
~新・坂路の申し子~
オールドファンにとって「坂路」といえばミホノブルボンの名前が真っ先に挙がるが、20~30代のファンはキタサンブラック(栗東・清水久詞厩舎)の方がしっくりくるかもしれない。
“新・坂路の申し子”とも呼ばれたキタサンブラックは、清水久調教師によって素質を見いだされ、5歳暮れの有馬記念を最後に引退するまで中長距離路線で大活躍。無尽蔵のスタミナを武器にG1を7勝した。
キタサンブラックは、500kgを優に超える馬体の持ち主だった。一般的に長距離ランナーは人間界と同じく、やや細身でスラっとした体形の馬が多い。しかしキタサンブラックは骨格が大きく、短距離馬と言われても違和感のないフォルムをしていた。
それは母の父サクラバクシンオーの血の影響もあっただろうが、坂路でのスパルタ調教も大きな要因となっていたはずだ。
ここ十数年の間に調教に対する考え方は徐々に変化を遂げた。かつてはレース直前の最終追い切りでも一杯に追うことが珍しくなかったが、藤沢和雄元調教師に影響もあって、あまり速い時計を出さずにレースに臨むケースも増えた。
そんな中にあって、坂路でハードに鍛えられたのがキタサンブラックである。時に不可解な惨敗を喫することもあったが、ゴールまでバテないスタミナに加えて、中距離戦でマイラーに対抗できるスピードも兼ね備えていた。間違いなく清水久師が課したハードな坂路調教もその源泉となっていたはずだ。