⑤クロワデュノール
父:キタサンブラック
母:ライジングクロス
生年月日:2022年3月21日
性別:牡馬
毛色:青鹿毛
調教師:斉藤崇史(栗東)
2024年の日本ダービーは、「前走・競走除外からのダービー制覇」や「最年長の日本ダービージョッキーの誕生」など、どこか例年とは雰囲気の違う幕の閉じ方をしていた。そんな熱が冷めやらない6月9日、東京競馬場でデビューした青鹿毛の牡馬は、早くも翌年のダービー馬候補として名があがるようになっていた。
新馬戦の人気は評判馬アルレッキーノ、ブラックセイバーに次ぐ3番人気だったが、そのレースぶりはまさに威風堂々。逃げたアルレッキーノを見ながらリラックスして2番手で進めると、直線で並びかけて一騎打ちの状態に持ち込む。そして200m手前でライバルを競り落とすと、末脚は鈍るどころかさらに伸びる。1分46秒7という東京芝1800mの新馬戦レコードを叩き出して、ゴール坂を駆け抜けて行った。
しかもこの記録は2歳戦だけでなく、3歳戦も含めてのもの。加えて2歳のリステッド競走であるアイビーSの過去10年の勝ちタイムと比較しても最も速く、前日に同条件で行われた3歳未勝利戦より、1秒4も上回っていたのであった。さらに、その未勝利戦を勝利したアドマイヤマツリは、翌年には福島牝馬Sを制して重賞ウィナーになる実力馬。こうなれば、こんなタイムを叩き出したクロワデュノールは注目されて当然といえる。
秋、東京スポーツ杯2歳Sで復帰した同馬は、1番人気に応えて重賞初制覇を決める。年末にはホープフルSを勝ち、翌年、世代の頂点を決める戦いである日本ダービーも盤石の展開で快勝。新馬戦で我々に見せた衝撃は確かであったことを、自らの実力で証明して見せた。もしかするとあの2024年ダービーの後、数週間感じていた異質な雰囲気は、次代のダービー馬が出現するということを予兆していたのだろうか。
【了】
(文●小早川涼風)