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デュランダル ~異次元の末脚を持つ短距離の王。競馬ファンの脳裏に刻まれ続ける“聖剣伝説”

text by 沼崎英斗

デュランダル(Durandal)

Durandal

デュランダル。伝説の聖剣と同じ名を持つ競走馬だ。その名にふさわしい鋭い切れ味で、豪快な差し切り勝ちを幾度も見せた。池添謙一騎手とのコンビでスプリンターズSやマイルCSを制覇。異次元の末脚は、20年近くたった今でも語り継がれる伝説である。

プロフィール

性別 牡馬
サンデーサイレンス
サワヤカプリンセス
生年月日 1999年5月25日
馬主 社台ファーム
調教師 坂口正大
生産者 社台ファーム
通算成績 18戦8勝【8-4-1-5】
獲得賞金 5億323万2000円
主な勝ち鞍 2003年 マイルチャンピオンシップ
2003年 スプリンターズステークス
2004年 マイルチャンピオンシップ
受賞歴 2003年 最優秀短距離馬
2004年 最優秀短距離馬
産駒成績 産駒デビュー年:2007年
通算重賞勝利数:8勝
通算G1勝利数:1勝
代表産駒 エリンコート(2011年 優駿牝馬)

全頭撫で斬る驚異の追い込み

 名前の由来は、中世の叙事詩である『ローランの歌』で、主人公ローランが使う不滅の聖剣・デュランダルである。短距離で後方一気という脚質から人気を集め、日本国内のレース17戦のうち15戦が上り最速という、まさに聖剣の如き切れ味を見せた。

 2歳の新馬戦、快感を覚えるほどの桁違いな末脚を見せ快勝。初戦からその才覚に惚れた者も多いだろう。クラシックへの夢も広がったが、脚部不安のために残念ながら休養に入る。

 3歳8月の復帰では2着となるが、その後は3連勝する。そして、G1マイルチャンピオンシップに挑戦。結果的に追い込み勢が台頭するという、デュランダルに持って来いの流れになったが、G1の精鋭たちの壁に阻まれ10着に沈んだ。

 その後は自己最長の1800m戦に挑戦するなどしたが結果が出ず、1200mに舞台を戻して、4歳の9月にセントウルSに挑んだ。上り最速を出しての3着であったが、ここで初めてコンビを組んだ池添謙一騎手との出会いが彼の運命を変えた。この後のスプリンターズステークスに挑戦するように陣営に進言したのだ。陣営はデュランダルが追い込み脚質であったこともあり、距離適性に悩んだが、最終的に進言を受け入れ電撃の6ハロン戦に向かった。

 レースでは、前年の覇者で引退レースとなるビリーヴが直線で早くも先頭になり、強さを見せつける。圧勝かと思われたが、大外から後方一気の爆発力を見せたデュランダルが襲い掛かる。聖剣の如き切れ味でビリーヴを猛追し、ゴール前でハナ差捉えきり、初のG1王者の称号を手に入れた。
 
 続くレースは、前年10着のマイルチャンピオンシップである。最後の直線、残り200mでも後方集団にいたデュランダル。「流石に届かないだろう」というほどの絶望的な差があったが、一頭だけ33秒台の異次元の末脚で差し切って見せた。耳を絞りながら懸命に走り、前年のリベンジに成功した。G1を連勝して、JRA賞最優秀短距離馬に選出され、名馬の仲間入りを果たした。

 5歳になり裂蹄を発症してしまったために、ぶっつけ本番で高松宮記念に出走した。小回りの中京競馬場や休み明けという不利な条件ながらよく伸びたが、クビ差の2着におわった。
 
 そして再び裂蹄を発症し春シーズンを全休し、連覇を目指すスプリンターズステークスに直接向かうこととなった。
 
 当日は重馬場で、追い込みを信条とするデュランダルには向いていない条件が揃ってしまった。逃げるカルストンライトオを捉えることができずに2着まで。
 
 続いてのマイルチャンピオンシップは出走馬の中で、唯一33秒台の上がりを繰り出して後方から豪快に差し切って連覇達成。このレースをデュランダルのベストレースに上げる声が多いのも頷けるほどの勝ちっぷりであった。

 その後は香港マイル5着、スプリンターズステークス2着として、マイルチャンピオンシップを最後に引退することになった。前年の驚異的な勝ち方もあり単勝1.5倍に推されたが、8着という結果となりターフを去った。

 引退後は社台スタリオンステーションで種牡馬となった。オークス馬のエリンコートなど、重賞馬も輩出したが、後継種牡馬には恵まれなかった。ただ、母の父としてチャンピオンズカップを勝ったチュウワウィザードや宝塚記念を制したブローザホーンなどを輩出している。

 古の伝説は口伝により語り継がれてきた。最近のスプリント界では中々お目にかかれない後方一気という脚質も、デュランダルの唯一無二の個性として語り継がれていくのだろう。

【了】

(文●沼崎英斗)

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