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2005年宝塚記念スイープトウショウ口取り式
2005年宝塚記念スイープトウショウ口取り式

「強い牡馬と混じってよく頑張ってくれました」

 控えたタップダンスシチーがコスモバルクを捉えにかかったのは3コーナーを過ぎてから。4コーナー手前で先頭に立ったが、佐藤哲三騎手にいつもの手応えがない。4コーナーに差し掛かるころには、必死に手綱を押していた。他にもリンカーンやゼンノロブロイといった有力どころがタップダンスシチーを射程圏に入れていたが、やはりそれぞれの鞍上の手は激しく動いていた。

 そんな中、抜群の手応えで4コーナーを回ったのがスイープトウショウだった。直線を向くと、タップダンスシチーを交わしにかかるリンカーンの外から鋭伸。残り200m付近で、内からリンカーン、ゼンノロブロイ、スイープトウショウの3頭による争いとなっていた。

 三つ巴からいち早く抜け出したのはスイープトウショウ。リンカーンとゼンノロブロイが伸びあぐねる中、大外からもう1頭が突っ込んできた。半年後にディープインパクトに初黒星をつけるハーツクライである。

 残り100mを切った辺りから、横山典弘騎手を背にしたハーツクライはスイープトウショウとの差を一気に詰めるが、2頭の馬体が並んだのはゴール板を数十メートル過ぎてから。ゴールの瞬間はクビだけスイープトウショウが前に出ていた。

 冒頭の「なんとスイープトウショウ!」を連呼したのは、実況を担当していたカンテレの石巻ゆうすけアナウンサーだ。牝馬による宝塚記念制覇に驚きを隠せなかったのだろう。そして、レース後、ワガママ娘の激走に労いの言葉を送ったのは池添騎手だった。

「メチャクチャ嬉しいです。最後は内の馬を交わして、あとは外から来ているのがわかりましたので、頑張ってくれと祈りながら追っていました。強い牡馬と混じってよく頑張ってくれました」

 秋華賞に続くG1勝利に、高ぶる気持ちを抑え、安堵の表情で勝利騎手インタビューに応えた。牝馬による宝塚記念制覇は、1966年のエイトクラウン以来、実に39年ぶりの快挙でもあった。

 また、スイープトウショウが宝塚記念を勝って以降、ウオッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタ、ジェンティルドンナなど牡馬勝りの女傑が増え、「牝馬時代」が到来した。その扉をこじ開けたのが、他でもないスイープトウショウだったのではないだろうか。

 今年の宝塚記念には出遅れ癖のあるレガレイラが参戦する。20年前のスイープトウショウのように強豪牡馬を蹴散らすことができるのか。その走りにも注目だ。

【了】

(文●中川大河

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