⑤2025年 天皇賞(春)(勝ち馬ヘデントール)
最後に取り上げるのは、記憶に新しい、2025年の天皇賞(春)。同じ3000m超のG1である菊花賞との相関性が高いと言われる中、前年の菊花賞馬アーバンシックが出走を回避。菊花賞馬不在で、にわかに混戦ムードとなっていた。
そんな中、レーン騎手が騎乗するのは菊花賞でアーバンシックの2着となっていたヘデントール。年明け初戦のダイヤモンドSでも4馬身差の完勝を見せており、1番人気(単勝オッズ3.1倍)に推されていた。
その他の人気馬は、2番人気(単勝オッズ4.5倍)が、前哨戦の阪神大賞典を6馬身差圧勝のサンライズアース。3番人気(単勝オッズ4.9倍)が、一昨年の天皇賞(春)覇者ジャスティンパレスとなっていた。
レースは、ジャンカズマがハナを切り、先手を取ることも考えられていたサンライズアースは好位のポジション。好発を切ったヘデントールはその後ろのインコースに控え、ジャスティンパレスは後方馬群から進めていた。主導権争いで少し競ったこともあり、少し速めの流れ。
ペースが速いにも関わらず、レースが動いたのも2周目向正面と早く、前は早めに先頭へ立とうとしたサンライズアースにマイネルエンペラーが抵抗して先頭へと変わる。後方からはジャスティンパレスが一気に上がって3番手まで浮上。さらにペースが上がる中、ヘデントールはジャスティンパレスの後ろで冷静に外へと持ち出して、直線へと向かう。
直線に入ると、最内で粘るマイネルエンペラーを捕まえにいくサンライズアース。ジャスティンパレスは動いたぶん苦しくなり、その外からショウナンラプンタとヘデントールが伸びてくる。
残り200mあたりで外からその争いに蹴りをつけたヘデントールが抜け出すも、道中最後方で脚を溜めていたビザンチンドリームが大外から一気に迫っていた。この2頭に絞られた争いは、最後まで前に出させなかったヘデントールが押し切って勝利。アタマ差の2着にビザンチンドリームが入り、3馬身差の3着がショウナンラプンタとなった。
勝ったヘデントールは、悲願のG1初制覇。1〜4着までを4歳馬が独占し、4歳世代の強さを改めて証明するレースとなった。長距離らしい出入りの激しいレースとなる中、道中はコースロスなく進めながらもポジションは悪くせず、溜めた末脚を直線で爆発させる理想的な競馬。
ヘデントールの強さはもちろんながら、テン乗りで完璧にエスコートしたレーン騎手の騎乗を見ると、「長距離は騎手」と言われるのも頷けるレースであった。
今回紹介したリスグラシューやウインマリリンのように、継続騎乗のパターンも稀にはあるが、多くはテン乗りで結果を出すことが求められている短期免許のジョッキー。その中で、毎年のように日本で活躍を見せているダミアン・レーン騎手の対応力は素晴らしいものがあり、今年もどれだけの活躍を見せてくれるか非常に楽しみである。
【了】
(文●中西友馬)
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