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2023年ダービーをタスティエーラで制したレーン騎手
2023年ダービーをタスティエーラで制したレーン騎手

④2023年 東京優駿(勝ち馬タスティエーラ)

 ウインマリリンの「神騎乗」の翌年となる、2023年春。来日したレーン騎手の身元引受厩舎は、再び堀厩舎へと戻っていた。そして、レーン騎手自身4度目のダービー挑戦となったのが、その堀厩舎所属で皐月賞2着馬のタスティエーラとのコンビであった。

 この年のダービーの注目は、3戦3勝で無敗の皐月賞馬ソールオリエンス。皐月賞では目の覚めるような末脚で大外一気を決めており、抜けた1番人気(単勝オッズ1.8倍)に推されていた。続く2番人気(単勝オッズ4.5倍)は、青葉賞馬スキルヴィング。ダービーと同じ舞台で行われた、ゆりかもめ賞と青葉賞を連勝。舞台適性の高さが評価されての2番人気となっていた。

 そして3番人気(単勝オッズ6.9倍)は、皐月賞1番人気3着のファントムシーフ。皐月賞で騎乗したルメール騎手がスキルヴィングに乗るため、テン乗りの武豊騎手とのコンビで挑んでいた。

 それに、タスティエーラ(単勝オッズ8.3倍)を加えた4頭までが単勝10倍を切る人気に推され、発走を迎えた。

 レースは、スタート直後にドゥラエレーデが落馬する波乱の幕開け。外枠からでもパクスオトマニカがハナを切り、上位人気馬の中では好位につけたタスティエーラが一番前。それを見る形でソールオリエンスが運び、ファントムシーフは中団後方寄りから進め、スキルヴィングはその直後の位置どりとなった。

 パクスオトマニカが後続を10馬身近く引き離した逃げを打ったわりに、前半1000mの通過は60秒4とほぼ平均ペース。離れた2番手以降は完全なスローペースで4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、パクスオトマニカのリードはジリジリと詰まっていき、2番手追走のホウオウビスケッツとその外へと持ち出したタスティエーラが前を追う。残り200mで先頭はタスティエーラに入れ替わるも、内からベラジオオペラ、外からソールオリエンスとハーツコンツェルトが併せ馬の形で追いかけてくる。

 ゴール前では4頭が一団となって入線したが、レーン騎手のアクションに応えてわずかにしのぎ切ったタスティエーラが勝利。クビ差の2着がソールオリエンスとなり、さらにハナ差でハーツコンツェルト。4着のベラジオオペラもさらにハナ差という大激戦であった。

 勝ったタスティエーラは、嬉しいG1初制覇。鞍上のレーン騎手は4度目の挑戦でダービー初制覇となったのだが、すごいのがテン乗りで勝利したということ。

 「ダービーはテン乗りでは勝てない」というのは競馬の格言のひとつで、実際にレーン騎手も、ダービー初挑戦であった2019年には断然人気のサートゥルナーリアにテン乗りで騎乗し、4着に敗れていた。

 そのジンクスを覆し、1954年のゴールデンウエーブ以来69年ぶりとなるテン乗りでの勝利。名手の手綱さばきに、東京競馬場に詰めかけたファンは酔いしれることとなった。

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