【私の“推しレース” 5選】競馬イラストレーター・えいたが選ぶ「何度も見返したくなる熱い戦い」
名勝負の記憶、競走馬が紡ぐドラマ――競馬ファンなら誰しも心に残る“推し”があるはず。今回の『私の“推し〇〇”』では、XやInstagramで競馬イラストを発信し、多くのファンに支持されている人気イラストレーター・えいたさん(@eitanokeiba)に『推しのレース』を5つ語っていただきました。
①2018年安田記念 ~矢作調教師の連闘策~
1つ目のレースは、2018年の安田記念です。結果から言うと、優勝したのはモズアスコット。9番人気という低評価を覆してのG1初制覇でした。
モズアスコットのデビューは3歳6月と遅めでしたが、3戦目で初勝利を挙げると、そこから怒涛の4連勝で一気にオープン入りを果たします。年末の阪神カップで初めて重賞に挑戦し、1番人気に推されながらも結果は4着。ただ、その走りからはG1級の相手にも通用する手応えを感じました。
そして迎えた2018年。大目標を安田記念にしていたモズアスコットでしたが、阪急杯と読売マイラーズカップでいずれも2着に敗れ、賞金が足りない状況に。そこで、なんとか安田記念にこぎつけようと、オープン特別の安土城ステークスに出走します。しかし、ここでもまさかの2着。「さすがに出走は厳しいか……」と思った矢先、回避馬が出たことで、繰り上がりでの出走が決まります。
とはいえ、客観的に見ると状況は非常に厳しいものでした。繰り上がり出走はもちろんですが、重賞未勝利かつ“連闘”。9番人気という評価も納得ですよね。でも、私は「よし、これは狙える」と自信がありました。なぜなら『開成調教師の仕事』(矢作芳人 著/ガイドワークス/2014年)という本を読んでいたからです。
この本で矢作先生は「一番仕上げやすいローテーションは『連闘』である」と語っている印象が強く残っていました。確かに安土城ステークスを勝てなかったのは想定外だったかもしれませんが、そもそも連闘で安田記念に出走するといプランです。世間的には、連闘の馬を買うのは避けがちですが、私は「まさに本に書かれているローテだ!」と思い、迷わず買いました。そして、この結果ですよね。非常においしかったです(笑)。
今でこそ、矢作厩舎の“連闘”は注目されるようになっていますが、当時はまだそこまで知られていなかったと思います。本を読んで得た知識と、モズアスコットの連闘というタイミングが合致し、すごく気持ちがよかったです。