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ダイワスカーレット 〜ウオッカとの激闘、12戦すべてで3着以下なしの”ミス・パーフェクト”の軌跡〜

text by 中西友馬

ダイワスカーレット(Daiwa Scarlet)

競走生活全12戦で3着以下はゼロ、桜花賞・秋華賞の牝馬クラシック2冠を制した名牝である。ライバル・ウオッカとの激闘や、37年ぶりの牝馬による有馬記念制覇など、彼女の辿ったパーフェクトな歴史を振り返ろう。

DaiwaScarlet

プロフィール

性別 牝馬
アグネスタキオン
スカーレットブーケ
生年月日 2004年5月13日
馬主 大城敬三
調教師 松田国英
生産牧場 社台ファーム
通算成績 12戦8勝【8-4-0-0】
獲得賞金 7億8668万円
主な勝ち鞍 有馬記念(2008年)
エリザベス女王杯(2007年)
桜花賞(2007年)
受賞歴 最優秀3歳牝馬(2007年)
最優秀父内国産馬(2007年)
産駒成績 産駒デビュー年:2010年
通算重賞勝利数:0勝
通算G1勝利数:0勝
代表産駒 ダイワレジェンド

連対率100%のミス・パーフェクト

 ダイワスカーレットは、2006年11月に京都競馬場でデビューした。父はアグネスタキオン、母は中山牝馬Sなど重賞を4勝したスカーレットブーケで、3つ上の半兄には、新馬戦当日に行われたマイルCSを勝つなどG1を5勝した、ダイワメジャーがいるという良血馬であった。

 レースは兄ダイワメジャーの主戦である安藤勝己騎手を背に、2番手追走から早目先頭で押し切ってデビュー勝ち。続く中京2歳Sも2番手からの抜け出しで連勝を飾った。

 年が明けて3歳となったダイワスカーレットは、シンザン記念で重賞に挑戦。1番人気に推されるも、前走で下したアドマイヤオーラに逆転を許して2着となった。続く桜花賞トライアルのチューリップ賞。前年の最優秀2歳牝馬ウオッカとの初対決となったレースは、果敢にハナを切るも、ただ1頭追いかけてきたウオッカにクビ差屈しての2着となった。そして迎えた牝馬3冠第1戦の桜花賞。好位から先に先頭に立つと、追いかけてきた断然人気のウオッカを抑え込んで勝利。G1初制覇を飾った。

 ライバルであるウオッカが東京優駿(ダービー)に向かったため、次走に予定していた優駿牝馬(オークス)はダイワスカーレットが最有力と目されていたが、直前の感冒によって回避となった。

夏を経て、復帰戦となったローズSを勝利したダイワスカーレットは、牝馬3冠最終戦の秋華賞に駒を進める。1番人気こそダービー馬となったウオッカに譲ったが、4角先頭から後続を封じて勝利を飾った。

 エリザベス女王杯も制したダイワスカーレットは、続く有馬記念で、ライバルのウオッカだけでなく、引退レースとなる兄のダイワメジャーとの対決も果たす。内をすくったマツリダゴッホに敗れて2着となるも、追い上げてきた3着の兄ダイワメジャーと、伸びを欠いた11着ウオッカには先着を果たした。

 年が明けて4歳となったダイワスカーレットは、目の怪我によってフェブラリーSと海外遠征を取り止める。回復して始動戦の大阪杯を快勝したが、次は脚の怪我によって休養に入る。

 復帰戦は秋の天皇賞(秋)となった。再びウオッカとの対決となったレースは、1000m58秒7のハイペースで引っ張ったダイワスカーレットが最内で粘るところに外を伸びたウオッカと同年のダービー馬ディープスカイが迫る。脚いろは外の2頭が明らかに優勢で一度は交わされたように見えたが、ゴール前でダイワスカーレットも差し返し気味に伸び、内のダイワスカーレットと外のウオッカがほとんど並んでゴール線上を通過した。13分にも及ぶ写真判定の結果、2センチ差でウオッカに軍配が上がった。惜しくも敗れはしたが、レースレコードを演出するハイペースの逃げを打ったダイワスカーレットも、負けて強しと言える内容であった。

 続く有馬記念を鮮やかに逃げ切って、4歳シーズンを終えたダイワスカーレット。年が明けて、再びフェブラリーSから海外遠征を予定していたが、調整過程で屈腱炎を発症。引退が決まり、結果的には有馬記念が引退レースとなった。

 引退後は繁殖牝馬となり、11頭の産駒が誕生。2024年には繁殖牝馬引退が発表され、現役の産駒は11番仔で唯一の牡馬である、グランスカーレット(父ロードカナロア)のみとなった。姉10頭と母の想いを背に、活躍が期待される。

(文●中西友馬)

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