
②ノーリーズン
単勝オッズ1.3倍のアグネスタキオンが勝利した翌年の皐月賞の勝ち馬は、なんと単勝115.9倍。この大波乱を演出したのが、ノーリーズンとテン乗りのドイル騎手であった。ノーリーズンは、6月生まれと遅生まれだったこともあり、デビューは3歳となってから。年明けの競馬初日となる1月5日にデビューすると、武豊騎手を背に新馬勝ち。
続くこぶし賞も武豊騎手とのコンビで連勝すると、皐月賞TRの若葉Sに出走。初コンビの福永騎手を背に、朝日杯FS勝ち馬アドマイヤドンに次ぐ2番人気の支持を受けるも、7着に敗れて皐月賞の権利獲得はならなかった。それでも陣営は皐月賞出走を諦めず、命運は抽選へと委ねられた。そして7分の2という狭き門を見事に突破したノーリーズンは、皐月賞の出走表に名を連ねることとなる。
この年の1番人気は、重賞3連勝中のタニノギムレット。次いで京成杯勝ち馬のローマンエンパイア、デビューから3戦3勝のモノポライザーと人気は続いていた。ノーリーズンは前走の大敗で人気を落とし、単勝オッズ115.9倍の15番人気。鞍上は、短期免許で来日しており日本のG1初騎乗となる、イギリスのドイル騎手に白羽の矢が立った。
レースは、内からメジロマイヤーと「逃げの中舘」コンビがハナを切り、ダイタクフラッグが2番手。注目のタニノギムレットは、後方馬群でじっくりと構えていた。流れとしてはほぼ平均ペースで進み、4角手前では馬群が一気に凝縮。タニノギムレットは馬群の一番外へと持ち出して、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、早めに先頭へと立ったダイタクフラッグが押し切りを図るところに、その直後にいたタイガーカフェが迫る。しかしそれも束の間、その外から一気にノーリーズンが伸びてきて先頭へと変わる。大外からタニノギムレットも猛追を見せるが、2番手争いまで。結局、先に抜け出したノーリーズンが快勝。接戦となった2着争いはタイガーカフェが制し、ハナ差の3着がタニノギムレット、そこからアタマ差の4着がダイタクフラッグとなった。
勝ったノーリーズンは、中団馬群のインでじっくりと脚を溜め、馬群が横に広がった4角でスムーズに外へと出すドイル騎手の神騎乗。これは人気の差があるぶん仕方のないことだが、常に外々を回されたタニノギムレットとは、走行距離に大きな差を感じた。
しかしノーリーズンはその後、1番人気となった菊花賞での落馬競走中止など、勝利を挙げることができずに5歳秋に現役を引退。大波乱を演じた皐月賞は、ドイル騎手の好騎乗とバッチリ噛み合った、一世一代の大駆けであった。