あまりにも「早すぎた」皐月賞馬5選。クラシック一冠後に勝利を挙げることができなかった名馬たち
3歳クラシック第1弾となる、皐月賞。「もっとも速い馬が勝つ」と言われてきたレースだが、過去の勝ち馬には、怪我などによって引退が「早い馬」や、ピークを3歳春に迎えるなど成長が「早い馬」も多数いた。そこで今回は、皐月賞を最後に勝利を挙げることのできなかった馬をピックアップ。中でも印象に残っている5頭を順に紹介する。

①アグネスタキオン
最初に取り上げるのは、今回の5頭で唯一、皐月賞を最後に現役を引退したアグネスタキオン。父は時代を作ったサンデーサイレンス、母は桜花賞馬アグネスフローラという良血馬だ。ひとつ上の全兄にはダービー馬アグネスフライトもおり、デビュー前から注目を集めたアグネスタキオンであったが、新馬戦は意外にも3番人気。稽古の動きが平凡であったためだったが、フタを開けてみれば、母と兄の主戦を務めた河内騎手を背に3馬身半差の快勝。
そして、続く2戦目に陣営が選択したのが、出世レースのラジオたんぱ杯3歳S。このレースでも、2着のジャングルポケットに2馬身半の差をつけて連勝。3着で続いたクロフネの後ろが5馬身も離れていたこともあり、G1の朝日杯FSを制したメジロベイリーを差し置いて、このレースの上位3頭が世代3強との呼び声も高まった。
年明け初戦の弥生賞も5馬身差の圧勝、連勝を5に伸ばしたアグネスタキオンは、もちろん皐月賞に出走。単勝オッズ1.3倍という断然の1番人気に支持されていた。共同通信杯を勝利していたジャングルポケットが、単勝オッズ3.7倍の2番人気。外国産馬のクロフネは出走できないこともあり、単勝オッズ10倍以下はこの2頭のみで発走を迎えた。
レースは、スタート直後に最内枠のジャングルポケットが大きく躓く波乱の幕開け。内からシュアハピネスがハナを切り、大外枠からシャワーパーティーが2番手につける。アグネスタキオンは好位から進め、ジャングルポケットは躓きが響いて後方からの展開を余儀なくされる。3角あたりで馬群は一気に凝縮し、アグネスタキオンは早くも外に出していつでも抜け出せる態勢。ジャングルポケットはダンツフレームと併せ馬の形でポジションを上げていき、前を射程圏に入れて4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、先頭は2番手から早めに先頭へと立ったシャワーパーティー。その外からアグネスタキオンが伸びてきて、さらにその直後までジャングルポケットも迫っていた。残り200mで先頭へと抜け出したアグネスタキオン。ジャングルポケットも懸命に追うが、まくり気味に上がってきたぶん、ジリジリと離され始める。逆にジャングルポケットの内からダンツフレームが伸びてきて2番手へと浮上するが、アグネスタキオンが押し切って勝利。1馬身半差の2着にダンツフレームが入り、ジャングルポケットはさらに半馬身差の3着となった。
勝ったアグネスタキオンは、これでデビューから4戦4勝。無敗で皐月賞を制したことから、史上2頭目となる無敗の3冠馬誕生に早くも期待が集まったが、ダービー3週間前に屈腱炎を発症。ダービー断念だけでなく、皐月賞を最後に現役引退となった。
アグネスタキオン不在のダービーは、ジャングルポケットが皐月賞の鬱憤を晴らす勝利。そのジャングルポケットに2戦2勝だったことから、アグネスタキオンは「幻の3冠馬」と呼ばれた。皐月賞を最後にターフを去ることとなったが、その7年後に、産駒のディープスカイがダービーを制覇。父の無念を息子がひとつ晴らす結果となった。