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コントレイル  ~比類なき“父子無敗三冠馬”の肖像。夢のつづきは次世代へ~

text by 中西友馬

コントレイル(Contrail)

偉大なる父ディープインパクトに続く史上3頭目の無敗3冠馬として、競馬史に新たな1ページを刻んだコントレイル。通算G1・6勝を達成し、父の後継種牡馬として引退後も活躍も期待される名馬の軌跡を振り返る。

contrail
第41回ジャパンカップを制したコントレイル

プロフィール

性別 牡馬
ディープインパクト
ロードクロサイト
生年月日 2017年4月1日
馬主 前田晋二
調教師 矢作芳人
生産牧場 ノースヒルズ
通算成績 11戦8勝【8-2-1-0】
獲得賞金 11億9529万円
主な勝ち鞍 牡馬3冠(2020年)
ジャパンカップ(2021年)
ホープフルS(2019年)
受賞歴 最優秀2歳牡馬(2019年)
最優秀3歳牡馬(2020年)
最優秀4歳以上牡馬(2021年)
産駒成績 産駒デビュー年:2025年予定
通算重賞勝利数:0勝
通算G1勝利数:0勝
代表産駒 なし

偉大な父に捧ぐ無敗三冠

 コントレイルは2019年9月に阪神競馬場でデビューした。父は言わずとしれた名馬であり名種牡馬でもあるディープインパクト。母は現役時代は未勝利馬で、2頭いた半兄と半姉も主戦場はダートの短距離であった。レースは好スタートを決めて好位の外を追走。直線では抜群の手ごたえで先頭に並びかけて、抵抗する逃げ馬を突き放すという横綱相撲であった。

 このレースぶりに素質を感じとったコントレイル陣営は、2戦目に出世レースとされる、東スポ杯2歳Sを選択した。初の重賞挑戦に初の関東遠征、初騎乗のムーア騎手と初物尽くしであったが、ここでさらに進化した姿を見せた。2歳戦にしては速めの流れを中団で余裕を持って追走すると、残り400m付近で抜け出して5馬身差の圧勝。2歳レコードタイム更新のおまけ付きであった。

 続くホープフルSでも好位から難なく抜け出し、デビューから無傷の3連勝でのG1制覇を果たす。同世代には、既にデビューから3戦3勝でG1朝日杯FSを制していたサリオスがいたが、記者投票の結果、票が割れながらも最優秀2歳牡馬のタイトルを獲得した。

 明け3歳となったコントレイルは、トライアルや前哨戦を使わず、牡馬3冠第1戦の皐月賞に直行した。皐月賞には、同じく朝日杯FSからの直行となった前出サリオスも出走しており、この両馬の初対決に注目が集まっていた。

 レースは好位にスッとつけたサリオスに対し、コントレイルはいつもより後ろの位置どりとなった。大外をまくり気味に上がっていくコントレイルに対して、前が壁になりそうなところを上手くさばいて内から抜け出すサリオス。残り200mからは2頭のマッチレースとなるが、最後は力でねじ伏せたコントレイルが半馬身差で勝利した。

 続く東京優駿(日本ダービー)では、コントレイルが好位につけてサリオスは後方寄りという、皐月賞とは逆の位置どり。先に抜け出したコントレイルを目標にサリオスが迫るが、ラストで脚の上がったサリオスに3馬身差をつけて快勝した。

 夏を経て、中京競馬場で行われた神戸新聞杯を勝利すると、大一番の菊花賞に挑んだ。ダービーで脚の上がったサリオスはマイル路線に進んだため出走しなかったが、ここで現れたのが春のクラシックには出走していなかった夏の上がり馬、アリストテレスであった。

名手ルメールに導かれたアリストテレスは道中からコントレイルを徹底的にマーク。外からプレッシャーをかけ続け、直線では馬群から抜け出してのマッチレース。2冠馬相手に並びかけるところまでいったが、コントレイルはアリストテレスが前に出ることを許さず、クビ差凌いでゴールした。

圧倒的な人気に応え、父ディープインパクトに続き、史上3頭目となる無敗の3冠馬となった。

 同世代相手に7戦7勝としたコントレイルは、初の古馬相手となるジャパンカップに挑戦する。この年のジャパンカップには、G1を8勝している2018年の牝馬3冠馬アーモンドアイと、コントレイルと同じく無敗で同年の牝馬3冠を達成したデアリングタクトが出走しており、3冠馬3頭の対決が注目されていた。

キセキの大逃げで幕を開けたレースは、引退レースとなったアーモンドアイが先輩の意地を見せて勝利。コントレイルは中団から脚を伸ばすも、アーモンドアイを捉えられずに初黒星の2着。デアリングタクトは続く3着となった。

 年が明けて4歳となったコントレイルは、始動戦の大阪杯で3着に敗れる。その後は宝塚記念を目標にしていたが回避し、秋に備えることとなった。

 秋の復帰戦は天皇賞(秋)となった。1200mのG1、1600mのG1を制覇しており、3階級制覇を狙っての出走となるグランアレグリアや、同年の皐月賞を制してダービーでもハナ差の2着だった3歳馬のエフフォーリアなど、濃いメンバーが揃った一戦。コントレイルは先に抜け出したエフフォーリアを必死に追うも、グランアレグリアを捉えて2着に上がるのが精一杯だった。

 そして引退レースとなるジャパンカップでは、断然人気に応えて、菊花賞以来1年1ヶ月ぶりの勝利。最終レース終了後に、引退式も東京競馬場で行われた。有終の美を飾り、コントレイルはターフに別れを告げた。

 引退後は種牡馬入りをし、初年度から200頭近くの種付け頭数が集まった。2025年からデビューする産駒の活躍が期待される。

【了】

(文●中西友馬)

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