HOME » コラム » 5選 » オルフェーヴル産駒の最高傑作は? 芝・砂問わないスケールがデカすぎる“暴君”の子どもたち5選 » ページ 5
GildedMirror
ギルデッドミラー

⑤ギルデッドミラー

 ここまで国内外のG1馬を4頭紹介してきたが、最後の1頭は、実績としてはG3を1勝したのみ。しかし、能力の高さは疑いようのなかった馬がギルデッドミラーである。

 この馬も芝の新馬戦でデビューを迎えると、少し出負けしながらも差し切り勝ち。3歳春にはG3アーリントンC2着や、G1 NHKマイルC3着など、マイル戦線で活躍を見せた。しかし、その後はなかなか結果が出ず、大敗することが増えてきた。京都牝馬S2着やターコイズS3着など、重賞で馬券圏内に入ることもあったが、連続して好走できずにムラ駆けの印象が強かった。

 そんなギルデッドミラーが転機を迎えたのが、5歳夏。初ダートとなるNST賞に、三浦騎手との初コンビで挑戦すると、一発回答で約2年半ぶりの勝利を挙げる。距離を1600mに延ばしたグリーンチャンネルCでも、コースレコードで勝利したデシエルトに唯一食い下がっての2着。そして、ダート重賞初挑戦となった武蔵野S。単勝1.7倍の断然人気に推されたのは、デビューから8戦6勝2着2回と未だ底を見せていないレモンポップであった。しかしギルデッドミラーは、先に抜け出したレモンポップをゴール寸前でハナ差交わして勝利。重賞初制覇を飾った。

 年が明けて6歳を迎えたギルデッドミラーは、根岸Sでレモンポップと再戦。上がり最速の脚で迫るも、今度は先に抜け出したレモンポップを捕らえ切れずに2着。しかし、武蔵野Sと同じ1600mのフェブラリーSなら逆転の可能性は十分あると感じられるレースぶりであった。

 ギルデッドミラーはクラブ馬のため、牝馬は基本的に6歳春を前に現役引退するのが既定路線。そのため、ギルデッドミラーにとってはフェブラリーSが、G1制覇に向けて最初で最後のチャンスと言っていいレースであった。

 そして、悲願のG1初制覇にかける思いは、鞍上の三浦騎手も同じであった。武豊騎手の記録を抜いて新人年間最多勝記録を樹立しながら、デビューから14年間JRAのG1は未勝利。ついに巡ってきたG1獲りの大チャンスであったが、ギルデッドミラーはフェブラリーS1週前に繋靭帯炎を発症。さらには剥離骨折も判明し、フェブラリーSに出走することなく現役引退となった。

 そしてその翌週に行われたフェブラリーSは、レモンポップが快勝。結果がどうなっていたかは分からないが、G1の大舞台でこの2頭の戦いが見れなかったことが、本当に残念でならない。

 今回紹介した5頭以外にも、350キロに満たない小柄馬ながら菊花賞5着などの活躍を見せたメロディーレーンや、天皇賞(春)をカラ馬のまま2番手でゴール線を通過したシルヴァーソニックなど、ファンに愛される個性派を多数輩出しているオルフェーヴル。

 競馬ファンとしては、いつか父が成し遂げられなかった凱旋門賞制覇を達成する産駒も現れてほしい。そんなことを期待してしまう。

【了】

(文●中西友馬

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