HOME » コラム » 5選 » 世紀末覇王や無敗の三冠馬がまさかの敗戦。波乱を呼ぶ“大阪春の陣”を振り返る【大阪杯名勝負 5選】 » ページ 5
LeiPapale
第65回大阪杯を制した時のレイパパレ

⑤2021年(勝ち馬レイパパレ)

 キタサンブラックの勝利から4年。G1格上げ5年目となった2021年の大阪杯は、2強+1+1のような、いびつな構図であった。

 まず2強と目されていたのは、単勝1.8倍で1番人気のコントレイルと、単勝2.8倍で2番人気のグランアレグリア。4歳牡馬のコントレイルは、前年に無敗で3冠を達成。ジャパンCではアーモンドアイに敗れてデビューからの連勝は7でストップしたが、これからの競馬界を背負って立つ存在だとされていた。

 そして5歳牝馬のグランアレグリアは、前年に安田記念、スプリンターズS、マイルCSを3連勝。既にスプリント路線とマイル路線を制圧したと言っても過言ではなかった。同じルメール騎手を主戦とするアーモンドアイが現役を引退したことも影響し、3階級制覇を目指して初の2000mに挑戦となっていた。

 単勝5.8倍の3番人気で続いたのが、4歳牡馬のサリオス。春のクラシックではコントレイルに敗れ、マイルCSではグランアレグリアに敗戦。2強にリベンジを誓う一戦であった。そして単勝12.2倍の4番人気に推されたのは、4歳牝馬レイパパレ。前年の牝馬3冠には間に合わなかったが、地道に力をつけていき、デビューから負けなしの5戦5勝。前走のチャレンジCで重賞初制覇を飾ったばかりで、G1クラスの馬と一緒に走るのは今回が初めてであったが、どこまでやれるか未知の魅力に期待をされていた。5番人気は単勝49.8倍と大きく離れており、この4頭が人気を集めて発走を迎えた。

 レースは、出負け気味ながら二の脚が速かったレイパパレが、デビュー2度目となる逃げる競馬。ハッピーグリンが2番手を追走し、その直後にサリオスやグランアレグリアがつける形。コントレイルは人気馬の中では一番後ろ、中団後方寄りから進めていた。前半の1000m通過は59秒8と、雨の降る重発表の馬場を考えると速めの流れで進み、馬群は縦長。2番手追走だったハッピーグリンは早々に脱落し、コントレイルは早めに好位まで浮上を図る。それに併せるようにグランアレグリアもポジションを上げ、上位人気4頭が前を固める形で4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、逃げるレイパパレは馬場の良いところを選んで外めへと持ち出す。その空いたスペースを突こうとサリオスは内へと潜り込み、グランアレグリアとコントレイルも併せ馬の形でレイパパレを追いかける。しかし、レイパパレは逆にその3頭を突き離し、セーフティーリードを築いたまま悠々と逃げ切り勝ち。もつれたその後ろの争いは、上位人気3頭の争いを外からまとめて交わしたモズベッロが、4馬身差の2着を奪取。コントレイルがなんとか3着を確保した。

 勝ったレイパパレは、デビューから無傷の6連勝でG1初制覇。コントレイルやグランアレグリアを倒してのG1制覇には大きな価値があり、まさに新星誕生を予感させる勝利であった。

 このように、ひと昔前は天皇賞(春)のステップレースとして、有力馬の始動戦となることも多かった大阪杯。近年は、大阪杯→天皇賞(春)というローテーションは激減。G1へと格上げになったこともあり、大阪杯を目標とする中距離馬が増えてきた印象である。

 今年はどんな馬が勝利して、大阪杯の歴史に名を刻むのか、楽しみにして見ていきたい。

【了】

(文●中西友馬

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