「国内で唯一ディープを破った」ハーツクライの後継馬は?(2) 産駒はオールマイティに活躍するJC覇者
ハーツクライ。国内で唯一ディープインパクトに土をつけた歴史に残る名馬である。2023年3月に天国へと旅立ったが、2021年に種牡馬を引退するまで、数多くの名馬を送り出してきた。今回は、その中からピックアップした後継馬候補を5頭紹介する。二頭目はシュヴァルグラン。
シュヴァルグラン
主な産駒(牡馬):メリオーレム(西部スポニチ賞)
5歳秋を迎えたジャスタウェイがフランス遠征を行っていた最中、日本では1頭のハーツクライ産駒がデビューを迎えていた。それがシュヴァルグランである。そのシュヴァルグランは、新馬戦で2着に敗れるも、直後の未勝利戦で勝ち上がり、重賞初挑戦となる京都2歳Sでも3着に好走。しかしその後は、クラシック挑戦はおろか自己条件でも取りこぼしてしまい、初勝利から1年近く勝ち星から遠ざかってしまう。
転機となったのは、3歳10月の500万下(現1勝クラス)。これまで中距離中心に使われてきたシュヴァルグランはこのレースで初めて、芝2400mの距離を走ることとなる。すると好位から抜け出し、2馬身差の快勝。続く1000万下(現2勝クラス)、1600万下特別(現3勝クラス)も芝2400mで連勝し、トントン拍子にOP入りを果たす。
翌年の阪神大賞典で重賞初制覇を飾り、そのスタミナを武器に天皇賞(春)へと挑戦するも、その前に立ち塞がったのが、同世代の菊花賞馬キタサンブラック。3着に敗れたシュヴァルグランはその後、G1ではことごとくキタサンブラックの後塵を拝する結果となり、G1タイトルに手が届いていなかった。
そんな中で迎えた、5歳秋のジャパンC。単勝1番人気はもちろんキタサンブラック。その相手筆頭には、その年のダービー馬であるレイデオロが挙げられており、シュヴァルグランは単勝5番人気に甘んじていた。しかし、初コンビとなる短期免許のボウマン騎手に導かれたシュヴァルグランは、最後の直線でキタサンブラックを交わし、レイデオロの追撃を凌いでG1初制覇。ヴィクトリアマイルを連覇した半姉ヴィルシーナに続き、兄妹でG1タイトルを佐々木主浩オーナーにプレゼントした。
シュヴァルグランはその後、7歳にしてドバイシーマCで2着に入るなど息の長い活躍を見せ、2019年の有馬記念を最後に現役を引退。翌年から種牡馬としての生活をスタートさせ、2025年1月現在、産駒が2世代デビューを果たしている。シュヴァルグランの現役時代からは想像しにくいが、芝・ダート問わず、さらには短距離・長距離も問わず、産駒はオールマイティーな条件で活躍。まだ重賞馬は輩出されていないが、近いうちに重賞を勝つ馬も現れることだろう。
【了】
(文●中西友馬)
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