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福永祐一騎手とのコンビが印象深い名馬たち (4) 挑戦19度目にして“福永家”の悲願成就

text by 中西友馬

2024年に厩舎を開業した、福永祐一調教師。その直前の2023年までは騎手として、歴代4位の勝利数を誇るトップジョッキーであった。今回は、そんな福永祐一元騎手とのコンビが印象的であった馬に注目。その中から5頭をピックアップして紹介する。四頭目はワグネリアンだ。

Wagnerian
第85回日本ダービー、福永祐一騎手は挑戦19度目で初制覇

ワグネリアン

 エピファネイアによる菊花賞制覇から2年が経った、2017年の夏。年齢も40歳を越え、中堅からベテランに差し掛かってきた福永が出会ったのが、ワグネリアンであった。

 父ディープインパクト、母ミスアンコール、母父キングカメハメハ、母母ブロードアピールの4頭ともに金子真人オーナーが所有していた馬という、まるでゲームのような血統であった同馬は福永を背に、新馬戦、野路菊S、東京スポーツ杯2歳Sと3連勝。

 年明け初戦の弥生賞ではダノンプレミアムに敗れてデビューからの連勝は3でストップしたが、ダノンプレミアム不在の皐月賞では、混戦の中で1番人気に推される。しかし、その皐月賞ではエポカドーロの7着に敗れ、ダービーは5番人気で迎えることとなった。

 今までは中団辺りから末脚に賭けていた戦法を取っていたワグネリアンだが、不利とされる外枠を引いてしまったこともあり、福永はスタートから押して好位のポジションを取りに行った。普段と違う戦法を取ることは折り合いを欠き、20年前のキングヘイローと同じ結末となるリスクを孕んでいた。しかしワグネリアンは好位できっちりと折り合い、最後は逃げ粘る皐月賞馬エポカドーロを交わして第85代ダービー馬の座を射止めた。

 福永にとっては、キングヘイローでの初挑戦から20年、19度目のダービー騎乗にして悲願のダービー制覇であった。これは福永にとってはもちろん、落馬による大怪我により、30歳という若さで現役引退を余儀なくされた父・洋一にとっても、自らが叶えられず息子に託した夢であった。

 ワグネリアンのダービー制覇はまさに、「福永家の悲願」が成就した瞬間だったのである。

【了】

(文●中西友馬

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