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有馬記念で有終の美を飾った歴史的名馬たち (3)勝っても負けても伝説を残す「金色の暴君」のラストラン

text by 中西友馬

年末の風物詩となっている有馬記念。数多くの歴史的名馬たちが“有終の美”を飾って引退してきた名物レースだ。今回はそんな有馬記念の歴史の中から、ラストランの直後に引退式を挙げた名馬5頭のレースをピックアップして紹介する。三頭目はオルフェーヴル。

Orfevre
オルフェーヴル引退式

③オルフェーヴル

 ディープインパクトがターフを去ってから7年が経った、2013年の有馬記念。この年の主役は、そのディープインパクト以来、史上7頭目となるクラシック3冠を達成したオルフェーヴルであった。

 オルフェーヴルは、3歳時にクラシック3冠を制覇。その後、ディープインパクトも成し遂げられなかった3歳での有馬記念制覇も達成し、翌年には宝塚記念でG1・5勝目。日本最強馬の地位を確固たるものとして、フランスへと渡る。日本調教馬史上初の凱旋門賞制覇まであと一歩まで迫るも、ソレミアにクビ差及ばずの2着。さらにその翌年も凱旋門賞に挑戦するが、トレヴに5馬身差をつけられてまたも2着に敗れていた。

 そのオルフェーヴルが、ラストランとして出走したのがこの年の有馬記念。国内では全てのレースで手綱を執っていた池添騎手を背に、単勝1.6倍の1番人気に支持されていた。2番人気は前年覇者のゴールドシップ。少し離れた3番人気にジャパンC4着のアドマイヤラクティが続き、4番人気はダービー、菊花賞でオルフェーヴルの2着となっていたウインバリアシオン。前年の宝塚記念後に屈腱炎を発症。直前の金鯱賞で1年5ヶ月の長期休養から復帰し、オルフェーヴルのラストランで再びの対決が実現となった。

 オルフェーヴルの最後の勇姿を目に焼きつけようと中山競馬場に駆けつけた12万人超の歓声の中、発走を迎えた。

 レースは、ルルーシュがハナを切り、カレンミロティックが2番手につける展開。アドマイヤラクティが好位から進め、ウインバリアシオンは中団のインコース。ゴールドシップとオルフェーヴルは後方からとなっていた。

 3角手前でルルーシュは後退し、カレンミロティックが押し出されるように先頭へと変わる。馬群が凝縮し、オルフェーヴルも外を通って一気に先頭集団まで浮上。それに続くようにウインバリアシオンとゴールドシップも前を射程圏に入れ、4角を回って最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、オルフェーヴルが堂々先頭へと立つ。その後ろからライバルのウインバリアシオンが懸命に追うも、その差は詰まるどころか広がる一方。最後は2着のウインバリアシオンに8馬身もの大差をつけ、圧巻の勝利を飾った。

 勝ったオルフェーヴルは、G1・6勝目。凱旋門賞でトレヴに5馬身もの差をつけられた鬱憤を、8馬身差の圧勝で晴らしてみせた。そして2着に入ったのは、3歳時からともにしのぎを削ってきたウインバリアシオンであった。屈腱炎から復帰し、オルフェーヴルのラストランで再びワンツー決着という、まるでドラマのような結末であった。

 有馬記念当日の全レース終了後、中山競馬場にて引退式が行われ、オルフェーヴルはターフに別れを告げた。逸走してしまった阪神大賞典を含め、池添騎手を振り落とすことも多々あったオルフェーヴル。そのパワーを走る能力に転換できる、まさに「金色の暴君」であった。

【了】

(文●中西友馬)

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