【ジャパンC 外国馬診断】“ディープのラストクロップ”オーギュストロダンの実力&取捨を考察
先週のマイルチャンピオンシップに出走したチャリンは5着。先週の外国馬診断では消しと判断していたため、馬券に絡まなかった結果だけを見れば正解だったわけだが、レース内容はさすが欧州トップマイラーというものであった。スタート後の行き脚がつかず、道中は後方集団から。直線に入った時もまだ後方3番手あたりであったが、大外に持ち出されると勝ち馬と同じ上がり33秒6の末脚で2着争いまで持ち込み、5着とはいえ2着馬とはタイム差なしの走り。同じ芝1600mで行われた前走のQE2世Sより、13秒5速い1分32秒4の走破時計で駆け抜けてみせて、日本の馬場にも十分対応できる姿を見せた。こうなると俄然注目を集めるのは、今週のジャパンカップに遠征してくる外国馬3頭だろう。ここではその外国馬3頭の紹介と個人的な取捨について、1頭ずつ書いていきたい。第1弾はディープインパクト産駒のオーギュストロダンだ。
オーギュストロダンは、アイルランド調教馬だ。もうこの馬に関しては詳しい方も多いと思うが、昨年の英ダービーを筆頭にG1を6勝している実績の持ち主である。
これだけでも、歴代のジャパンカップに出走した外国馬の中でもトップクラスの注目を集めて当然だが、それに加えてフューチャーされているのが、この馬がディープインパクト産駒であるという点である。
ディープインパクト産駒は欧州でも活躍を見せており、サクソンウォリアーやスノーフォールなど、クラシック競走を制した馬も多数いる。その中でも、オーギュストロダンは欧州におけるディープインパクトの代表産駒といえる馬である。
芝2400mの持ち時計はBCターフでマークした2分24秒30。雨は降らずに時計の速い馬場になってほしいという、外国馬の陣営とは思えないコメントを残しており、それだけ時計面に対する自信の表れが見られる。
では実際、オーギュストロダンの取捨はどうなのか。ここからは私個人の見解となる。
日本を代表する種牡馬、ディープインパクトのラストクロップであるオーギュストロダン。ディープインパクトは種付けシーズンに亡くなったため、最終世代で競走馬登録されたのは国内6頭、国外6頭の計12頭しか存在しない。
その中から、代表産駒ともなり得る英ダービー馬が輩出されただけでも奇跡的なことで、なおかつその馬が父の祖国である日本でラストランを迎える。まるでアニメや漫画の世界のような話である。
迎え撃つ日本馬の筆頭格ドウデュースは、日本調教馬で唯一ディープインパクトを下したハーツクライの産駒で、さらには鞍上がディープインパクトの主戦であった武豊騎手と何かを因縁を感じる。色々な要素が盛りだくさんで、競馬ファンなら誰しもが胸踊る、夢のようなレースとなっている。
ただし、いざ馬券となるとシビアになるのが競馬ファン。オーギュストロダンが欧州でG1を6勝しているという実績は確か。あとは、誰もが知りたい日本の馬場への適性。これに関しては、今年の凱旋門賞に挑戦したシンエンペラーが参考になると考えている。
外国産馬のシンエンペラーは、全兄が凱旋門賞馬のソットサス。当然この馬にも欧州の馬場への適性があるのではないかと考えられ、今まで凱旋門賞に挑戦した日本馬とは違う切り口で期待がかけられたが、結果は12着に敗れた。
もちろん、日本でG1勝利のないシンエンペラーと、欧州でG1を6勝しているオーギュストロダンを、同じ物差しではかること自体がナンセンスであるという意見はあるだろう。しかし、やはりディープインパクト産駒であるという血統面だけではなく、普段から調教やレースを行っている馬場に馬は適応していくものなのではないかと、私は考える。
さらには、ムラのあるように見えるオーギュストロダンの戦績も気になる点である。
一見すると馬場の適性なのかとも思える2度のキングジョージ敗戦だが、昨年の2着馬ウエストオーバーはその後の凱旋門賞で2着。今年の2着馬ブルーストッキングは凱旋門賞を勝利と、その他の出走馬を見てもメンバーレベルの高いレースであったことが分かる。
逆に、オーギュストロダンが倒してきた相手の中にはあまり強敵が見られず、レースレベルに疑問が残る部分もある。
以上の理由に加え、オッズ面での妙味があまりないことを考慮し、個人的な取捨としてオーギュストロダンは消しと判断したい。
【了】
※訂正【迎え撃つ日本馬の筆頭格ドウデュースはディープインパクト産駒→日本調教馬で唯一ディープインパクトを下したハーツクライの産駒
(文●中西友馬)
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