ベガはベガでも“ホクトベガ”やメジロラモーヌの“完全三冠”など【エリザベス女王杯 名勝負5選①】
前身のビクトリアカップから名前を変え、1976年に創設されて第1回が行われたエリザベス女王杯。元々は牝馬3冠の最終戦として、4歳(現3歳)限定で京都芝2400mを舞台に行われていた。しかし1996年に秋華賞が新設されたことに伴い、4歳以上の牝馬が出走できるように見直しが行われ、施行条件も京都芝2200mとなった。今では、3歳馬vs古馬の最強女王決定戦として注目の一戦となっている。そんなエリザベス女王杯の歴史から、10のレースをピックアップ。前半はその中から、20世紀に行われた5つのレースを紹介する。
①1986年(勝ち馬メジロラモーヌ)
最初に取り上げるのは、G1格付けとなって3年目、1986年のエリザベス女王杯。この年の注目ポイントは、JRA史上初となる牝馬3冠達成なるかという一点に集中していた。そして、その偉業に王手をかけていたのがメジロラモーヌであった。
メジロラモーヌは、3歳(現2歳)10月にデビュー。新馬戦は、今ではお目にかかれないダート変更となったが、後続を3.1秒突き放す圧勝でデビュー勝ちを飾る。その後、気性面の問題から人気を裏切るレースもあったが順調に勝ち星を重ね、桜花賞とオークスを制覇。エリザベス女王杯の前哨戦であるローズSも制し、牝馬3冠に王手をかけたエリザベス女王杯へと出走した。
この年の出走頭数は19頭。今のフルゲートよりも多い頭数でのレースだったが、メジロラモーヌの単勝オッズは1.3倍。2番人気が単勝13.9倍と大きな開きがあり、メジロラモーヌへの圧倒的な支持の高さが際立っていた。
レースは、マチカネエルベがハナを切り、注目のメジロラモーヌは好位の外にポジションを取る。桜花賞やオークスより、前めの位置どりから進めることとなった。前半1000mの通過は63秒2とやや遅めの流れで進んでいく。
レースが動いたのは、3〜4角中間あたり。メジロラモーヌが早めに動き、逃げるマチカネエルベと2番手のスーパーショットの外まで浮上。前は3頭横並びで4角を回り、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、メジロラモーヌが前の2頭を捕らえて先頭に立つ。そのままリードを3馬身ほどに広げるが、早めに動いたぶん余力はなく、内にモタれ加減。そこにヒタヒタと迫ってきたのが、一度は交わしたはずのスーパーショット。1完歩ごとに差を詰めるが、最後は半馬身凌ぎ切ってメジロラモーヌが勝利。史上初となる牝馬3冠を達成した。
さらに、3冠全てのトライアルも勝利しているため、メジロラモーヌの偉業は「完全3冠」とも評された。ちなみに、2024年現在で牝馬3冠は7頭が達成しているが、この完全3冠を達成しているのはメジロラモーヌただ1頭のみ。桜花賞との間隔があまりないオークスTRに出走する桜花賞馬は、今後もなかなか現れないだろう。