メジロドーベル ~「メジロライアンの子」からはじまった名牝への道のり~
メジロドーベル(Mejiro Dober)
メジロドーベルは、1990年代に4年連続で年度最優秀牝馬に選ばれた名牝。特にエリザベス女王杯では史上初の連覇を達成し、桜花賞2着、オークス優勝と華々しい戦績を誇った。引退後はリードホースとして後進の馬たちを導き続け、その名は今もターフに刻まれている。
プロフィール
性別 | 牝馬 | |
父 | メジロライアン | |
母 | メジロビユーテイー | |
生年月日 | 1994年5月6日 | |
馬主 | メジロ商事 | |
調教師 | 大久保洋吉 | |
生産者 | メジロ牧場 | |
通算成績 | 21戦10勝【10-3-1-7】 | |
獲得賞金 | 7億3342万2000円 | |
主な勝ち鞍 | 1999年 エリザベス女王杯 1998年 エリザベス女王杯 1997年 オークス |
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受賞歴 | 1996年 最優秀3歳牝馬 1997年 最優秀4歳牝馬、最優秀父内国産馬 1998年 最優秀5歳以上牝馬 1999年 最優秀5歳以上牝馬 |
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産駒成績 | 産駒デビュー年:2001年 | |
通算重賞勝利数:0勝 | ||
通算G1勝利数:0勝 | ||
代表産駒(主な勝ち鞍) | なし |
史上初となるエリザベス女王杯連覇を達成
メジロドーベルという名は「メジロ」の冠名+犬の「ドーベルマン」が由来となっている。
父も母も同じメジロ一族で、メジロドーベルは父メジロライアン初年度産駒として誕生した。デビューから引退まで吉田豊が手綱を握り続け、6歳まで活躍する馬主孝行な馬であった。
7月にデビューを迎えて、4番人気ながら好位から抜け出し勝利をあげる。次走には新潟3歳ステークスを選択し、重賞に初挑戦するも5着まで。その後はサフラン賞、いちょうSと順調に勝ち進み、3歳の牝馬最強を決める阪神3歳牝馬ステークスに挑戦する。5番手からレースを進ると、最後の直線では鋭く伸びて2着に2馬身差をつけてのレコード勝ち。最優秀3歳牝馬に選ばれ、来年以降の活躍を嘱望された。
4歳になると桜花賞を見据え、チューリップ賞から始動する。単勝1.3倍という圧倒的な支持を受けたが、折り合いを欠き3着に終わった。
本番の桜花賞では2番人気で出走した。1番人気は別路線で5戦4勝のキョウエイマーチだ。4コーナーで先頭に並びかけたキョウエイマーチを後方から懸命に捕まえにいくが、キョウエイマーチの脚色は衰えなかった。結果的に4馬身差をつけられ2着に終わる。
次の舞台オークスでは桜花賞1,2着馬が人気を分け合う形になる。レースでは逃げたキョウエイマーチに対して、メジロドーベルは中段から進める。2400mという未知の距離に対応できず失速するキョウエイマーチに対して、メジロドーベルは一気に抜け出して、2着ナナヨーウイングに2馬身半差をつけて勝利した。
その後、牡馬混じりのオールカマーを制し、牝馬3冠最後の秋華賞に向かう。オークスの勝ちっぷりやオールカマーで歳上の牡馬を倒したことにより、1.7倍の1番人気に支持される。レースは中段で運び、直線で先頭に立ったキョウエイマーチをゴール手前でかわすと、最後は2馬身半差をつけて勝利する。牝馬2冠を達成し、堂々と古馬戦線に殴り込みをかける。
勢いそのままに年末の有馬記念に3番人気で出走するが、ここでは8着に敗れる。このレースには1世代上の牝馬である”女帝”エアグルーヴも出走しており3着に入っていた。後のライバル、エアグルーヴと初の顔合わせとなった。この年、メジロドーベルは最優秀4歳牝馬に選ばれたが、エアグルーヴはこの年の天皇賞(秋)を優勝、ジャパンカップで2着、有馬記念3着という輝かしい実績が評価され、年度代表馬に選ばれた。
5歳になり、産経大阪杯でエアグルーヴと再戦する。単勝1.2倍の一本被りのエアグルーヴに対して、メジロドーベルは3番人気。女帝の壁は厚く、3/4馬身差の2着に敗れる。その後、宝塚記念でも対決するも5着に敗れた。牝馬相手であれば強さを発揮するのだが、牡馬混合戦だとなかなか本領発揮できない。
しかし、秋になると、府中牝馬Sでは単勝1.7倍に応えてあっさりと勝利をあげる。そして、次走はエアグルーヴも出走するエリザベス女王杯へ。今まで3回対戦して一度も先着したことがないが、メジロドーベル陣営は勝機を見出していた。先のジャパンカップを見据えるエアグルーヴには隙があると判断したのだ。後方から内ラチ沿いを強襲し、上がり33.5秒という生涯最速の脚を使って優勝。4度目の対戦で初めて先着を果たした。
続く年末の有馬記念でもエアグルーヴと対戦したが、メジロドーベルは9着に敗れる。このレースを最後にエアグルーヴは引退し、5度に及ぶ直接対決は幕を閉じた。
6歳も現役を続行したが、牝馬に先着されるなどかつての勢いに陰りが見えてきた。最後のレースとなったのは前年勝利したエリザベス女王杯であった。前年覇者ながら2番人気扱いに発奮したメジロドーベルは、ゴール前で先頭を捉えると、他馬を3/4馬身離して優勝。エリザベス女王杯史上初の連覇を達成した。前年に引き続き、最優秀5歳以上牝馬に選ばれ、繁殖牝馬生活に入る。
年度牝馬代表に4年連続で選ばれる功績を残し、当時の牝馬戦線を牛耳ったメジロドーベル。現在はターフに向かう仔馬のリードホースをしている。その名は血統表には残らないかもしれないが、メジロドーベルの後押しを受け成長した仔馬達は、今もターフを賑わせている。
※本文中の馬齢表記は当時の数え方を採用
(文●沼崎英斗)
【了】