イグナイター、アイコンテイラー連覇の可能性は? キングズソード回避で混沌とするJBCを考察
競馬ライター・中西友馬がお送りするオカルトではない“まじめな”ほうの考察、今回はJBCについて調べてもらった。のだが、原稿を提出してもらった後に今回の考察の主軸であったキングズソードの回避が発表される幸先の悪い事態となってしまった。とまぁJBCクラシックは残念なことになったしまったのだが、スプリントとレディスクラシックにも連覇が期待される馬がいる。イグナイターとアイコンテイラーが偉業を達成する可能性はどれほどあるのだろうか?
連覇が期待される馬の信頼度は?
先週の天皇賞(秋)は、単勝2番人気のドウデュースが勝利。ホウオウビスケッツの刻む緩い流れを、後方2番手からまとめて面倒見るというインパクト絶大なレース。あのスローでレース上がりを1秒2上回る豪脚は、まさに異次元の走りであった。
ちなみに先週このコーナーで取り上げたのは、1番人気リバティアイランドの取捨について。牡馬混合のG1もしくはG2で勝利経験がないため、勝率は0%で連対率は5%とお伝えしたが、結果は13着。
このコーナーとしては爪痕を残せた印象はあったが、肝心の馬券はヒットせず…。当然のことながら、来ない馬が分かるよりも来る馬が分かる方が馬券には直結するのだと、身に染みて感じる結果となった…。
さて、今週は中央競馬でのG1はないが、4日(月)に地方競馬の祭典JBCが、佐賀競馬場と門別競馬場で行われる。ということで、今週はJBCについて馬券のヒントとなるような情報をお伝えできればと思っている。
今回の考察のキーワードは『連覇』。この時点でお分かりだと思うが、門別で行われるJBC2歳優駿に関しては、まだ歴史が浅くて過去のサンプルが少ないこともあり扱うことができない。そのため、今回は佐賀で行われる3競走の考察となることをご了承いただきたい。
今年は3競走全てに、連覇を目指す昨年の覇者が出走予定。もちろんいずれの馬も有力馬の1頭には違いないが、信頼度はどれほどのものなのか。過去の連覇に挑んだ馬たちの結果を参考にしながら、レースごとに見ていくことにしたい。
まずは、JBCクラシックのキングズソード。
今年で24回目の開催となるJBCクラシックは、過去に延べ14頭が連覇に挑戦。その結果は、【7-1-2-4】となっており、勝率50%とかなりのハイアベレージ。着外の4頭も全て4着もしくは5着で、掲示板を外した馬はいない。
ただ、地方所属馬による優勝は2021年のミューチャリーのみで、ミューチャリーは翌年の出走なし。この延べ14頭には含まれておらず、これら14頭は全てJRA勢ということになる。元々JRA勢が圧倒的な成績を残すレースであるため、この成績だけを鵜呑みにせず、馬券圏外になった年のパターンを調べる必要がある。
JBCは各競馬場の持ち回りで行われているため、連覇と言ってもコース形態は毎年変わり、距離も多少のバラつきがある。そこで、前年と同じ距離で行われた年と、違う距離で行われた年の成績を分けてみた。
すると、前年と同じ距離で行われた年に連覇を狙った馬の成績は【3-1-2-0】、前年と違う距離で行われた年に連覇を狙った馬の成績は【4-0-0-4】という結果となった。
勝率はどちらも同じ50%ではあるが、馬券圏外になった馬は全て、前年と違う距離で行われた年に連覇を狙った馬であることが分かった。
ちなみに今年は、昨年の大井2000mと同じく佐賀2000mで施行。前年と同じ距離であるため、キングズソードの複勝率は100%ということになる。
ということで、このコーナーとしてはキングズソードの信頼度は非常に高く、人気であってもまさに軸に最適な馬であるという結論に至った。(と、解説しきった後にキングズソードはが左前脚の屈腱炎を発症し、JBCクラシック回避が発表された……)
続いて、JBCスプリントに出走するイグナイター。
こちらもJBCクラシック同様に、今年で24回目の開催。過去に延べ15頭が連覇に挑戦しており、その結果は、【1-0-5-9】となっている。
一目見て明らかなように、JBCクラシックと比較するとかなり低調な結果。連覇は2006年のブルーコンコルドただ1頭のみで、勝率にすると7%。しかもこの年は川崎1600mで行われた年で、JBCマイルと呼ばれることもあるイレギュラー
な年。純粋なJBCスプリントの連覇は未だ達成されていないと言うこともできる。
この時点で既にイグナイターにはかなりの逆風が吹いていると言えるが、さらに嫌なデータがある。今年のイグナイターは東京盃からJBCスプリントへと挑むが、東京盃はJBCスプリントの最重要ステップレースとなっており、過去23年のうち15年の勝ち馬が前走東京盃の馬である。
しかし、その15頭全てが東京盃5着以内の馬であった。東京盃で6着以下に敗れた馬がJBCスプリントを制した例はなく、東京盃で6着に敗れたイグナイターは、このデータも覆す必要がある。
ということで、今年も有力馬の1頭に挙げられているイグナイターは、このコーナーでは軽視するという結論に至った。
最後は、JBCレディスクラシックのアイコンテーラー。
JBCレディスクラシックは今年で14回目と歴史が浅く、さらに牝馬のクラブ馬には引退規定がある関係などもあり、過去に連覇に挑戦した馬は延べ5頭のみ。その馬たちの成績は、【2-1-0-2】という結果になっていた。
5頭のうち2頭が連覇を達成しているのはJBCスプリントより好成績と言えるが、着外の2頭はともに11着と大敗。記憶に新しい、昨年のヴァレーデラルナも11着に敗れた。
この少ないサンプルだけでアイコンテーラーの今年の結果を論じるのはかなり難しいが、少し気になる点はある。
アイコンテーラーは昨年のJBCレディスクラシックを最後に、1年間勝利から遠ざかっている。前走のレディスプレリュードも、ゴール前でグランブリッジに交わされて惜しくも2着に敗れた。
過去13年の勝ち馬で、1年以上勝利から遠ざかっていた馬は2017年の勝ち馬ララベル1頭のみ。ララベルは地方所属馬であるため、JRA所属で勝利した12頭は全て、過去1年以内に勝利を挙げていた。
牡馬と比べて、実績より勢いが重視されるという牝馬の争いでは、近走の勢いは大きなファクターとなるということである。
ということで、過去のデータからはアイコンテーラーの連覇達成は難しいという結論となった。
最後に、今回考察した3レースの結論をまとめると
キングズソード ◎(回避)
イグナイター ×
アイコンテーラー △
という結果となった。予想のヒントとしていただけたら、幸いである。
【了】
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(文●中西友馬)