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グラスワンダーからタワーオブロンドンまで!G1馬を多数輩出の出世レース【京王杯2歳S 名勝負5選】

text by 中西友馬

朝日杯FSや阪神JFの前哨戦として、重要な位置づけとなっている京王杯2歳ステークス。多くのG1馬を輩出したこのレースは、1965年「京成杯」として創設され、「京王杯」となったのは1998年のことである。1980年からは主に東京芝1400mを舞台に行われ、現在はG2競走となっている。そんな京王杯2歳ステークスの歴史の中から、5つのレースをピックアップして紹介する。

Grass Wonder
第33回京成杯3歳Sを制したときのグラスワンダー

①1997年(勝ち馬グラスワンダー)

 最初に取り上げるのは、京成杯として行われていた最後の年となる、1997年の京成杯3歳ステークス。この年の焦点はただひとつ、グラスワンダーがどんな勝ち方をするかということだけであった。

 グラスワンダーは、ここまで2戦2勝。中山芝1800mの新馬戦を3馬身差で快勝すると、続くアイビーSは東京芝1400mで5馬身差の圧勝劇。初戦は番手抜け出し、2戦目は後方からの追い込みで勝ち切った。

 どんな競馬でも力を発揮できるレースセンスは卓越しており、単勝オッズは驚異の1.1倍。では、他のメンバーに実績がなかったのかというと、そんなことはない。

単勝7.1倍の2番人気クリールサイクロンは新潟3歳S覇者で、単勝13.7倍の3番人気タケイチケントウは函館3歳Sの覇者となっていた。さらに2頭とも2戦2勝と、いまだ土つかずの期待馬であった。無敗の重賞馬2頭がいるにも関わらず、グラスワンダーが断然の1番人気に支持されているという異様な状況であった。

 レースは、最内枠を利してファイブポインターがハナを切る。その直後にタケイチケントウとグラスワンダーがつけ、クリールサイクロンは最後方から進める展開となる。そのままの隊列で4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入るとすぐに、グラスワンダーがファイブポインターを交わして先頭に立つ。そこからは後続をグングンと突き放してのひとり旅状態。混戦となった2番手争いを尻目に、6馬身差の圧勝劇となった。

 2着争いを制したのは、内を突いて伸びたマチカネサンシロー。最後方から外を追い込んだクリールサイクロンが3着となった。

 グラスワンダーはその後、朝日杯3歳S(現朝日杯FS)を制して無敗の3歳王者に輝いた。しかし、その後は骨折による長期休養などもあり、なかなか万全の状態でレースに出走することが叶わなかった。

 そんな中でも、史上2頭目となるグランプリ3連覇を果たし、歴史的名馬となったグラスワンダー。スターホースの多いこの時代の中でも、ポテンシャルの高さは随一との声も多い馬である。

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