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ダンスパートナー ~両親の名声を高めた孝行娘。弟につづく“2週連続GⅠ制覇”の偉業~

text by 沼崎英斗

ダンスパートナー(Dance Partner)

ダンスパートナーは、父サンデーサイレンス、母ダンシングキイを持つ良血馬だった。1995年のオークス、1996年のエリザベス女王杯を制し、2年連続で最優秀牝馬の栄冠に輝いた。引退後は繁殖牝馬としても優秀な血統を広げ、弟ダンスインザダークとの姉弟GⅠ制覇も競馬史に名を刻む偉業となった。

ダンスパートナー

プロフィール

サンデーサイレンス
ダンシングキイ
生年月日 1992年5月25日
馬主 吉田勝己
調教師 白井寿昭
生産者 社台ファーム
通算成績 25戦4勝【4-9-3-9】
獲得賞金 6億378万1000円
主な勝ち鞍 1995年 オークス
1996年 エリザベス女王杯
受賞歴 1995年 JRA賞最優秀3歳牝馬
1996年 JRA賞最優秀4歳以上牝馬
産駒成績 産駒デビュー年:2001年
通算重賞勝利数:2勝
通算G1勝利数:0勝
代表産駒(主な勝ち鞍) フェデラリスト(2012年中山記念)

姉弟での2週連続GⅠ制覇で両親の評価を高めた

 父はスーパーサイヤーのサンデーサイレンス、母のダンシングキイはのちに桜花賞を制したダンスインザムードや菊花賞を制したダンスインザダークなど、数々の名馬を送り出した。二頭の血を受け継いだダンスパートナーは、白井寿昭厩舎に入厩し、彼女の物語は始まった。

 デビューは遅くなり、3歳の1月末。1200m戦で6馬身もの出遅れをかまし、早々に万事休す。しかし、終わってみれば驚異の末脚で2馬身差をつけて勝利する。続くエルフィンステークス、チューリップ賞もスタートが決まらなかったが、どちらも差のない2着という競馬をして、初のGⅠの舞台へ。

 桜花賞でも当然のように出遅れ、懸命に追い込むもののワンダーパフュームにクビ差届かず、2着までに終わった。出遅れがなければ勝っていたというレースが続くが、オークスのように距離が長ければ、出遅れは致命的ではなくなる。

 オークスでもスタートは若干遅れたが、中団で最終コーナーを回る。舞台が整えば、彼女を止められる馬はいない。持ち前の末脚を炸裂させ、上り最速で駆け抜けた。オークス馬に輝くと共に、白井寿昭調教師に初のGⅠのタイトルをプレゼントした。その後はフランスに遠征し、重賞を2戦走る。最高2着と勝てはしなかったものの、彼女の挑戦する姿勢はファンに勇気を与えた。

 そんな彼女の挑戦はまだまだ止まらない。牝馬が進むエリザベス女王杯ではなく、牡馬相手の菊花賞に出走することにしたのだ。オークスの勝ち時計がその年のダービーを上回っていたという自信も挑戦する後押しとなった。菊花賞は1番人気で出走するが、結果はマヤノトップガンの5着に敗れた。結果的に敗れはしたものの、この年の実績が評価され最優秀4歳牝馬を受賞し、同世代牝馬のトップに輝いた。

 その後は3戦連続2着というシルバーコレクターぶりを発揮したが、京成杯では1番人気に応え、約一年ぶりの勝利を挙げた。次の安田記念6着、宝塚記念3着と牡馬と遜色ない力を見せ続けるが、勝つまでには至らなかった。秋になり、陣営は前年に出走しなかったエリザベス女王杯に狙いを定める。

 レースでは女傑ヒシアマゾンをマークしつつ、最終直線では内をつき、他馬の追撃をしのいで1着でゴール。オークス以来のGⅠ勝利となり、牝馬同士では最強ということを証明した。エリザベス女王杯の1週前には1世代下の全弟・ダンスインザダークも菊花賞を制しており、姉のリベンジを果たし、2週連続の姉弟GⅠ制覇という偉業を達成する。そして、2年連続で最優秀5歳牝馬の称号も手にした。

 翌年も一線級の牡馬を相手に善戦し続けた。また、連覇を目指したエリザベス女王杯では、1.4倍という期待を背負い出走したが、クビ差届かず2着におわった。そして、暮れの有馬記念で14着となり、彼女はターフに別れを告げたのだ。

 引退後は繫殖牝馬となり10頭出産している。中山金杯、中山記念を勝ったフェデラリストを産むなど、一定の成績を残し、父サンデーサイレンスの評価を上げることに大きく貢献した。そして、彼女の全妹であるダンスインザムードの血脈から紫苑ステークスを制したヒップホップソウルが生まれるなど、一族の勢力はまだまだ拡大し続けるだろう。

 420キロ~450キロという小柄な馬体で25戦走り、牡馬と渡り合ったダンスパートナーの実力は、誰もが認める立派な名馬であった。

※本文中の馬齢は当時の表記

(文●沼崎英斗)

【了】

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