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ジャングルポケット ~21世紀最初のダービー馬。“世紀末覇王”を破った“府中の番人”~

text by 沼崎英斗
2001年ジャパンカップを制した時のジャングルポケット
2001年ジャパンカップを制した時のジャングルポケット

数々の名馬が歴史を彩ってきた日本競馬。「レジェンドホース名鑑」では、ファンの記憶に残る名馬たちを紹介する。今回取り上げるのは、21世紀最初の日本ダービー馬・ジャングルポケット。ライバルとの激闘を乗り越え、日本ダービー、そしてジャパンカップを制して新時代の到来を告げた名馬の軌跡を振り返る。

ジャングルポケット(Jungle Pocket)

プロフィール

性別 牡馬
トニービン
ダンスチャーマー
生年月日 1998年5月7日
馬主 吉田勝己
調教師 渡辺栄
生産者 ノーザンファーム
通算成績 13戦5勝【5-3-2-3】
獲得賞金 7億425万8000円
主な勝ち鞍 2001年 ジャパンカップ
2001年 日本ダービー
受賞歴 2001年 JRA賞年度代表馬
2001年 JRA賞最優秀3歳牡馬
産駒成績 産駒デビュー年:2006年
通算重賞勝利数:37勝
通算G1勝利数:7勝
代表産駒 トールポピー(2008年優駿牝馬)
オウケンブルースリ(2008年菊花賞)
トーセンジョーダン(2011年天皇賞・秋)

“世紀末覇王”を破った「府中の番人」

 21世紀はじまりの年、競馬界は外国産馬のクラシック参戦を解禁するなど、新時代の到来を感じさせる一年となった。そんな慌ただしい時代を駆け抜けることになるジャングルポケットは、父トニービン、母ダンスチャーマーの間に誕生した。

 デビュー戦は5番人気と決して前評判は高くなかったが、2番手から押し切り勝利する。このレースには後に朝日杯を勝つメジロベイリーや東スポ杯3歳ステークスを勝つタガノテイオーがおり、出走メンバー全頭が勝ち上がったということも話題になった。

 2戦目で早くも重賞の札幌3歳ステークスに挑戦し、後の二冠牝馬・テイエムオーシャンらを直線で抜き去り、レコード勝ちを果たす。

 順調な滑り出しをしたジャングルポケットの陣営は、クラシックを見据えた距離を経験させるために、阪神で行われる2000mのラジオたんぱ杯3歳ステークスを選ぶ。

 しかし、このレースでは後の日本競馬に多大な影響を与えることになる強力なライバル達と出会った。当日はライバル3頭で人気を分け合い、1番人気は外国産馬クロフネ、2番人気は素質馬アグネスタキオン、3番人気にジャングルポケットとなった。

 レースではクロフネとジャングルポケットが並んで進み、アグネスタキオンがその2頭をぴったりマークする形となった。3コーナーでクロフネが先に仕掛けると、アグネスタキオンはそれに反応する。

 直線に入り、”超高速の粒子”という異名を持つアグネスタキオンがあっという間に先頭に立ち、1位入線。

 仕掛けが遅れたジャングルポケットはクロフネを捉え、2着になるのが精一杯だった。このレースでは、3着クロフネまでがレコードタイムで駆け抜け、世代レベルの高さを世間に知らしめた1戦となった。

 3歳になったジャングルポケットは圧倒的1番人気となった共同通信杯を快勝し、皐月賞へ駒を進める。2番人気に支持されるが、1番人気は当然ながらアグネスタキオンとなった。ラジオたんぱ杯での借りをいかに返すか、というのが焦点だったが、スタート直後に躓いてしまい、いつもとは違う後方の位置取りとなってしまう。

 末脚で優るアグネスタキオンより後方にいては勝ち目がないとみたのか、鞍上の角田晃一は3コーナーから捲っていったが直線では失速して3着におわる。またしてもアグネスタキオンに敗れた。

 4戦4勝で底が見えないアグネスタキオンは3冠馬確実とまで言われていたが、皐月賞後に左前浅屈腱炎を発症し、電撃引退となった。

 アグネスタキオンの引退により、日本ダービーはクロフネ対ジャングルポケットの図式となった。レースは最初の1000mを58.4秒というハイペースの展開となる。

 最後の直線では伸びあぐねるクロフネを尻目に先頭に立ち、追いすがる皐月賞2着のダンツフレームに並ばせることなく、府中競馬場を1着で駆け抜けた。勝利後のウイニングランで見せた何度もいななくような姿は、ジャングルポケットの象徴的なシーンとして知られている。

 休み明けとなった札幌記念を3着とし、二冠を目指し菊花賞へ。クロフネは別路線に活路を求めたために、もはやジャングルポケットの一強かと思われた。しかしレースでは折り合いを欠き、素質開花したマンハッタンカフェの4着となる。

 つづく古馬相手の初G1となったジャパンカップでは、”世紀末覇王”テイエムオペラオーが立ちはだかった。前年の戦績を8戦8勝とし、史上最多の年間G1競争5勝をあげるという傑物であった。

 最後の直線では早めに抜け出したテイエムオペラオーが連覇達成かと思われたが、後方からジャングルポケットが上がり最速の豪脚で追い込み、クビ差で勝利する。東京競馬場では負け知らずであり、日本ダービーとジャパンカップの勝利により年度代表馬に輝く。

 4歳になり阪神大賞典、天皇賞(春)では2着となったが、その後のジャパンカップ、有馬記念は振るわず引退となった。不運だったのは東京競馬場が改修工事のため、ジャパンカップが中山競馬場での開催になったことだ。もし得意の東京競馬場で開催されていたら、結果は違っていたかもしれない。

 引退後は社台スタリオンステーションで種牡馬入りし、トーセンジョーダンやトールポピーといったG1馬を何頭も送り出した。

 21世紀初めてのダービー馬となり、前年度の偉大な覇王を下し、新時代の到来を告げたジャングルポケット。彼の荒々しい気性から繰り出される豪脚といななきは、21世紀を代表する名馬として皆の記憶に残り続けるだろう。

【了】
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【文:沼崎英斗】