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騎手がGⅠ初勝利するまでの挑戦回数ランキング【第5位】まさかこのレースで…?苦労人が掴んだ涙の初タイトル

text by 小早川涼風

競馬の世界で最高峰に位置づけられる「G1」。そのタイトルは騎手であれば一度は夢見る頂だろう。だが、その壁は高い。そもそも騎乗機会が限られ、さらに勝つには、運も馬の力も、技術も、すべてが噛み合わなければならない。そこで今回はG1初勝利までに最も多く挑戦した騎手たちトップ10 をランキング形式で紹介していく。今回は第5位。

第5位 津村明秀

挑戦48回目・2024年ヴィクトリアマイル・テンハッピーローズ

2024年ヴィクトリアマイルでG1初制覇を果たした津村明秀騎手(テンハッピーローズ)
2024年ヴィクトリアマイルでG1初制覇を果たした津村明秀騎手(テンハッピーローズ)

 競馬学校を卒業する際、優秀な騎乗技術を持つ者に贈られるアイルランド大使特別賞を受賞した津村明秀騎手。

 その賞が指し示すように競馬関係者からの評価は高く、同期の川田騎手からも「競馬学校時代に怪我で馬に乗れなかった時は、穴が開くほど津村だけを凝視していた」と言われるほどの技術を有していたという。

 そしてデビュー3年目の2006年にはタマモサポートで重賞初制覇。順調な騎手生活に思える。だが、G1の初騎乗は2009年のスプリンターズステークスでアイルラヴァゲインに乗ったのが最初だった。

 同期の川田将雅騎手はすでにG1を制し、藤岡佑介騎手や吉田隼人騎手もG1に乗り始めていたことを考えるなら、比較的遅い騎乗であったといえる。

 だが、同年秋のスプリンターズステークスでは最低人気のアイルラヴァゲインを4着に導いているあたり、やはり馬乗りとしては相当な実力者だ。

 そんな津村騎手がG1で一番惜しい競馬を続けたのは、カレンブーケドールとのコンビ。2019年のスイートピーステークスで初コンビを組んで勝利すると、続くオークスでは12番人気ながら2着に好走した。

 以降、2020年のジャパンカップまでタッグを組み、G1・2着3回、重賞2着5回という成績を残す。特に2着となった2019年のジャパンカップでは、レース後に涙を流して悔しさに暮れたという。

 のちに「完璧に乗ったのに勝てなくて、これまでで一番悔しいレース」と語った津村騎手は、同時に「東京競馬場でウイニングランができたら、きっと最高なのだろうな」と思いを馳せていたという。

 それから5年後、2024年ヴィクトリアマイルで、津村騎手は前年のパラダイスステークスからコンビを組んでいたテンハッピーローズに騎乗。

 15頭立て14番人気、単勝オッズは208倍という低評価だったが、スタートから中団で構えると、府中の直線を上り3ハロン33秒9の末脚で駆け抜けていき、抜け出していたフィアスプライドを捕らえて先頭でゴールした。

 47連敗にピリオドを打ち、夢にまで見たG1制覇を叶えた。この時に津村騎手が馬上から見た絶景は、果たしてどのようなものだったのだろうか。

【了】
(文●小早川涼風)

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