断然人気の悲劇…単勝1倍台で惨敗した超名馬(3)生涯唯一の馬券圏外…後の九冠女王が味わった挫折
競馬の世界に「絶対」は存在しない。どれほどの実績を積み、どれほどの期待を背負った名馬でも、時に敗北を味わうことがある。しかし、その確信が打ち砕かれた瞬間こそが、競馬の魅力の一つである。今回は、そんな断然人気に支持されながらも馬券圏外に沈んだ、“超”がつく名馬を5頭選出。年代順に振り返っていく。今回は3頭目。

③2019年有馬記念
単勝1番人気1.5倍 アーモンドアイ
次に紹介するのは、2019年の有馬記念。単勝1倍台の支持を集めたのは、前年に牝馬3冠を達成したアーモンドアイ。
その3勝を含めてすでにG1を6勝していた女傑は、単勝1.5倍という断然の人気。
香港カップを熱発で回避しての有馬記念出走であったが、これが引退レースとなっていたリスグラシューや、同年の皐月賞馬サートゥルナーリアらを引き離しての、1番人気であった。
レースは、アエロリットがハナを切り、人気3頭はいずれも中団より後ろから。その中で一番前につけたのは、中団外めから進めたアーモンドアイ。
そのすぐ後ろのインコースにリスグラシューはつけ、それを見る形でサートゥルナーリアという並び。
前はアエロリットがヴィクトリアマイル同様にハイラップを刻み、前半1000mの通過は推定58秒5前後で、後続を引き離す大逃げを打つ。
しかしそのアエロリットは、さすがに早々と苦しくなって4角手前で馬群は一気に凝縮。
アーモンドアイとサートゥルナーリアは外から、リスグラシューは内から前との差を詰め、4角を回って最後の直線へと向かう。
直線に入ると、アーモンドアイが先頭へと立とうとするが、その外からフィエールマン、さらにその外からサートゥルナーリアが一気に並びかけてくる。
大激戦になるかと思われたが、その混戦を断ったのは、サートゥルナーリアの外へと持ち出していたリスグラシュー。
残り150mあたりからは独走状態となり、最後はガッツポーズを見せながらの勝利。5馬身差の圧勝劇で、見事にラストランを飾った。2着にサートゥルナーリアが入り、ワールドプレミアがクビ差の3着。
アーモンドアイは、直線で一瞬先頭に立とうかという場面もあったが、後続に次々と交わされて9着に敗れた。
その後アーモンドアイは、翌年にもG1タイトルを3つ上積み。引退までに、JRA平地G1では最多となる、G1・9勝をマークした。
数少ない敗れたレースも大崩れすることはなく、この有馬記念がキャリア唯一の馬券圏外となったレースであった。
【了】
(文●中西友馬)
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