エピファネイア ~名牝シーザリオを母に持つ“才能の塊”。超良血馬は親になって真価を発揮~
エピファネイア(Epiphaneia)
ダービーでの惜敗や菊花賞の5馬身差圧勝が印象的なシーザリオを母に持つ超良血馬、エピファネイアの軌跡を辿る。“才能の塊”は種牡馬になってからも真価を発揮し続けている。
プロフィール
性別 | 牡馬 | |
父 | シンボリクリスエス | |
母 | シーザリオ | |
生年月日 | 2010年2月11日 | |
馬主 | キャロットファーム | |
調教師 | 角居勝彦 | |
生産者 | ノーザンファーム | |
通算成績 | 14戦6勝【6-2-1-5】 | |
獲得賞金 | 6億9858万2400円 | |
主な勝ち鞍 | 2013年 菊花賞 2014年 ジャパンカップ |
|
受賞歴 | なし | |
産駒成績 | 産駒デビュー年:2019年 | |
通算重賞勝利数:23勝 | ||
通算G1勝利数:11勝 | ||
代表産駒 | デアリングタクト(2020年 牝馬三冠) エフフォーリア(2021年 天皇賞・秋) ダノンデサイル(2024年 東京優駿) |
超良血馬は自らを制御できるのか
父は有馬記念2連覇など輝かしい実績を残したシンボリクリスエス、母は日米でオークス馬となった名牝シーザリオ。超がつくほどの良血馬であったエピファネイアは類稀なる能力を持ちながらも、気性難という難しさも持ち合わせていた。
新馬戦は当然1番人気であり、鞍上の福永祐一騎手が持ったままで3馬身差の快勝。次の京都2歳ステークスも危なげなく勝利して、初重賞のラジオNIKKEI杯へ。ここでは同世代の素質馬であるキズナと初対戦する。4コーナーから併せ馬の如くキズナと上がっていくが、力の差を見せつけるように前に出て1位入線する。
翌年初戦の弥生賞では、前半1000m61.6秒という超スローペースの展開となり、彼の荒ぶる気性は抑えられなかった。直線入口で早くも先頭に立つと、ゴール前で3頭に飲み込まれ4着に敗れた。
クラシック初戦の皐月賞は2番人気で出走。1番人気は二歳王者のロゴタイプとなった。レースは、抑えが効かないエピファネイアに対し、しっかり折り合ったロゴタイプという展開で進んだ。直線に入り二頭の併せ馬になったが、余力があるロゴタイプに競り負けて2着まで。
そして、日本ダービーの日を迎える。皐月賞2着のエピファネイアが3番人気まで落ちたのは、京都新聞杯を快勝したキズナが参戦したからだ。レースでは、今回もエピファネイアは行きたがるが、鞍上の福永祐一必死になだめる。最後の直線に入りロングスパートでジワジワ脚を伸ばし、残り100mを過ぎて先頭に立つ。眼前には誰もおらず、ついに福永祐一の悲願達成か。と思ったのも束の間、大外から武豊騎乗のキズナが雄大なストライドで豪快に差し切りゴールイン。エピファネイアはまたしても2着となると同時に、福永祐一の夢もお預けとなった。
夏を越え、残る一つの菊花賞制覇が命題となったエピファネイアは神戸新聞杯から始動する。単勝1.4倍の人気に応え、他馬に格の差を見せつける勝ちっぷりをした。
本番の菊花賞にはロゴタイプもキズナも参戦しなかったことにより、一躍大本命となった。先行して持ったまま先頭に立つと、後は独走。5馬身差をつけて菊花賞馬に輝いた。またダービーで勝てずに落ち込む福永祐一に、初の牡馬クラシックのタイトルをもたらした。
翌年の産経大阪杯にて復帰したエピファネイアは、またもキズナと対戦するが3着に敗れた。その後、香港で4着になり、体質面の弱さから再び休養に入る。
6ヶ月ぶりの復帰となった天皇賞(秋)は、豪華メンバーの中で6着と休み明けとしては上々の内容。続いてのジャパンカップは12頭ものGⅠ馬が集まったハイレベルなメンバー構成であったが、4番人気に支持される。好位の内目できちんと折り合い、ロスなくレースを進めた。残り300mから抜け出したエピファネイアを追い詰める馬は現れない。4馬身差をつける圧巻の勝利だった。
その後、ドバイワールドカップ(GⅠ)を最後に繋靭帯炎を発症し引退となった。
種牡馬になったエピファネイアは初年度から牝馬三冠のデアリングタクト、2年目には3歳で年度代表馬となったエフフォーリアなど、活躍馬を続々と輩出した。一方で古馬になってからの活躍馬が出ないと散々言われていた。しかし、2024年度のヴィクトリアマイルで6歳馬のテンハッピーローズが優勝。どうやら徐々に潮目は変わってきていそうだ。そして、上記にあげた馬は、すべてサンデーサイレンスの4×3の血統であるということを最後に付け加えておく。
現役時代に発揮し切れなかった能力を種牡馬となり、遺憾なく発揮しているエピファネイア。彼の本来のポテンシャルは如何ほどのものだったのか。産駒の活躍を見るたびにそんな思いを馳せてしまう。
(文●沼崎英斗)