名伯楽・藤沢和雄元調教師の天皇賞・秋制覇(5)天皇賞・秋6勝目!師にダービー制覇もプレゼントした孝行馬
今でこそ天皇賞(秋)に挑戦する3歳馬も一般的となったが、以前は3歳牡馬の秋の目標は、菊花賞であった。その潮流に一石を投じたのが、藤沢和雄元調教師である。3歳馬だけでなく、天皇賞(秋)に滅法強いイメージがあり、実際に6勝を挙げている。そこで本稿では、天皇賞(秋)を制した藤沢師の管理馬を5頭を順に振り返る。今回は5頭目。

⑤レイデオロ(2018年)
2017年のダービーで、藤沢師に悲願のダービー制覇をもたらしたのが、レイデオロ。その翌年となる2018年の天皇賞(秋)では、そのレイデオロが、藤沢師に14年ぶり6度目の天皇賞(秋)制覇をプレゼントした。
この年の天皇賞(秋)はダンビュライトが除外となり、このレースとしては珍しく、12頭という少頭数で行われた。そして人気を集めたのは、4歳馬の2頭であった。
1番人気は、スワーヴリチャード。春の大阪杯でG1初制覇を飾ると、宝塚記念ではなく安田記念に出走。2度の着外がある右回りの宝塚記念ではなく、連対率100%の東京で行われる安田記念を選択し、モズアスコットの3着となっていた。
そして2番人気は、レイデオロ。第84代ダービー馬であるレイデオロは、3歳時のジャパンカップでも、シュヴァルグランとキタサンブラックの間に割って入っての2着。対スワーヴリチャードに関しては、皐月賞とダービーで対戦し、ともに先着していた。この2頭の3度目の対決に注目が集まる中、発走を迎えた。
レースは、キセキがハナを切り、ヴィブロスとアルアインが並ぶようにして追走。レイデオロはポツンと中団から進め、スワーヴリチャードは後方インコースにポジションを取っていた。前半1000mの通過は59秒4と、高速馬場を考えれば平均〜やや遅めの流れ。少頭数ながら縦長の馬群のまま、最後の直線へと向かう。
直線に入ると、キセキが少し内を空けて先頭をキープ。単独2番手に浮上したアルアインが必死に追うも、なかなか差が詰まらない。このままキセキの逃げ切りかと思われたが、アルアインの外から伸びてきたのがレイデオロ。
残り200mを切ったあたりでアルアインを交わして2番手に浮上すると、残り100mあたりでキセキを交わして先頭に立ち、そのまま勝利。2着にはゴール前でキセキを捕らえたサングレーザーが上がり、ハナ差の3着がキセキ。1番人気のスワーヴリチャードは末脚不発に終わり、10着に敗れた。
勝ったレイデオロは、ダービー以来のG1・2勝目となり、鞍上のルメール騎手はこれが天皇賞初制覇。藤沢師は、14年ぶり6度目の天皇賞(秋)制覇となった。
2000mの天皇賞(秋)を6勝しているのに対して、3200mの天皇賞(春)は未勝利で終わった藤沢師。また、天皇賞(秋)と同じ時期に行われる3000mの菊花賞も未勝利であり、現代のスピード競馬にいち早く対応していた印象である。
「一勝より一生」という言葉をモットーに、馬のことを一番に考えている、素晴らしいホースマンであった。
【了】
(文●中西友馬)
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