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もはや反則級…後続を絶望させた異次元の圧勝劇(2)悪夢の最期でもファンは一生忘れない…あの輝かしい逃亡劇

text by 中西友馬

競馬では、2000m先のゴールでハナ差の決着になることもあれば、同じ位置からスタートしたとは思えないほどの着差がつくレースもある。特に重賞では、互いに実力があるのに、一方が相手を圧倒する姿は強烈なインパクトを残す。そこで今回は圧勝経験のあるG1馬に注目。印象的な勝ち方をした5頭をピックアップして紹介する。今回は2頭目。

1998年金鯱賞を制した時のサイレンススズカ
1998年金鯱賞を制した時のサイレンススズカ

②サイレンススズカ

~1998年 金鯱賞~

 今回のテーマは「圧勝」。決して悲運の最期を遂げた馬がテーマではないのだが、2頭目に紹介するサイレンススズカも、1頭目に紹介したホクトベガと同じく、レース中の怪我によって天国へと旅立ってしまった馬。

 そんな、歴代の競走馬の中でもトップクラスの人気を誇るサイレンススズカの“圧勝”レースは、後続を寄せつけない逃げを打った1998年の金鯱賞。

 5歳(現4歳)を迎えて、強気の逃げで覚醒を果たしたサイレンススズカ。バレンタインS、中山記念、小倉大賞典と3連勝。そんな中で迎えた金鯱賞は、同世代の菊花賞馬マチカネフクキタルとのライバル対決に注目が集まっていた。

 この2頭はプリンシパルS、日本ダービー、神戸新聞杯に続いて4度目の対決。対戦成績は、マチカネフクキタルが2勝1敗と勝ち越していた。

 ただ、それはサイレンススズカが覚醒前の話。ここ3戦の勝ちっぷりから、サイレンススズカが1番人気(単勝オッズ2.0倍)、マチカネフクキタルは2番人気(単勝オッズ4.2倍)で発走を迎えた。

 レースは、大方の予想通りにサイレンススズカがハナを切り、後続を引き離して縦長の展開を作り出す。前半1000mの通過は58秒1というかなりのハイラップ。

 並の馬なら暴走と言われても不思議ではないペースであるが、サイレンススズカにとってはこれがマイペース。終始10馬身前後のリードを保ったまま直線に向かうと、多少詰まったかに見えた差を再び広げ始めて独走状態。

 最後は後続に1秒8の差をつけての大差勝ち。ライバルと見られていたマチカネフクキタルは、中団追走から伸び切れず6着に敗れた。

 勝ったサイレンススズカは、続く宝塚記念でも逃げ切ってG1初制覇。さらに秋の毎日王冠では、ひとつ下となるグラスワンダー、エルコンドルパサーとの3強対決を制して、6連勝とした。

 そして、7連勝をかけた天皇賞(秋)では断然の1番人気(単勝オッズ1.2倍)に推されるも、独走状態の4角手前で急失速。こちらもホクトベガ同様に悲運の最期となってしまったが、金鯱賞の圧勝劇に衝撃を受けた競馬ファンは多いはずである。

【了】

(文●中西友馬)

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