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【ミルコ・デムーロ飛行機ポーズ 5選】情熱あふれるフライト ~あのミルコ・ヒコーキ くもり空わって~

text by 小早川涼風

 1999年に短期免許で初来日して以来、日本競馬で通算1300勝以上を挙げ、現在はJRA所属のジョッキーとして活躍するミルコ・デムーロ騎手。彼を語るうえで外せないのが「飛行機ポーズ」だ。

 これは、大きなレースを制したときにたびたび披露される決めポーズで、その名の通り両手を広げ、飛行機のような姿勢を取る。

 このポーズの元ネタは、イタリアを中心に活躍した元プロサッカー選手で、2025年現在はトルコ代表監督を務めるヴィンチェンツォ・モンテッラが、ゴール後に見せるパフォーマンスである。

 モンテッラのファンだったデムーロ騎手は、偶然新幹線で本人に遭遇し、「大ファンです! ガッツポーズも大好きです!」と声をかけた。その際、「大きいレースで勝ったら、ぜひやってください」と言われ、約束を交わしたという。それ以来、このポーズはデムーロ騎手を象徴するパフォーマンスとなった。

 今夏はアメリカへフライトし、奮闘を続けるデムーロ騎手。そこで今回は、彼が劇的勝利を飾り、飛行機ポーズを披露したレースを5つピックアップして紹介する。

2007年中日新聞杯を制した時のサンライズマックス
2007年中日新聞杯を制した時のサンライズマックス

①2007年中日新聞杯(サンライズマックス)

 初来日から9年目となった2007年、デムーロ騎手は1つの記録を達成した。それは当時の短期免許で来日した外国人騎手としては最多タイとなる、1日5勝を挙げるというもの。しかもこの記録は自身2度目で、6年ぶりの最多勝記録を作っているのだから驚きだ。

 だが、意外にもこの年の来日で挙げた重賞制覇は中日新聞杯のみ。その時の相棒がサンライズマックスである。

 3歳秋、皐月賞13着以来の復帰戦となった500万下条件(現:1勝クラス)を完勝し、続く1000万下条件(現:2勝クラス)の北野特別も連勝したサンライズマックス。

 余勢を駆って中日新聞杯に挑戦することとなったが、条件戦で手綱を取っていた池添謙一騎手は、同日の阪神ジュベナイルフィリーズでトールポピーに騎乗するため、陣営はデムーロ騎手に騎乗を依頼。絶好調の彼が乗るのならばと、格上挑戦ながらファンはサンライズマックスを1番人気に推した。

 レースは各馬が横一線のスタートを切るなか、サンライズマックスはやや立ち遅れて最後方から。だが、元々ゲートが得意な馬ではないことをデムーロ騎手も分かっていたのか、焦らずそのまま進めていく。

 勝負所の3コーナーから4コーナーで外から徐々に進出していくと、直線に向いたところで末脚が炸裂。1000m通過が58秒5とかなり速い展開でレースが進んだのも功を奏したか、2着から5着までがコンマ1秒の激戦になるのを尻目にサンライズマックスは突き抜けて先頭へ。そしてゴールの瞬間、デムーロ騎手は翼を広げた。

 入線後、勝利した騎手がファンに握りこぶしを作ってアピールをするガッツポーズはあれど、サッカーのゴールパフォーマンスのようなポージングを騎手が馬上で行ったのはこれが初めて。

 デムーロ騎手自身もイタリアの重賞を勝った際に一度やったのみで、これが人生2回目となる飛行機ポーズだった。

 レース後、JRAからは「決勝戦手前の御法(危険行為)」として過怠金5万円がデムーロ騎手には課された。しかし、競馬ファンには強く印象に残る「ファーストフライト」となった。

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