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あまりに儚い結末…衝撃のGⅠ落馬(5)地獄の空気…まさかの密着取材中に?ダービーでの悔しすぎる落馬

text by 中川大河

“人馬一体”という言葉があるように、競馬において騎手と馬の相性は非常に重要な要素の一つだ。しかし、どれだけ人馬の息がぴったり合っていても避けて通れないものがある。

それがスタートからゴールするまでの間に、騎手が馬の背中から落ちてしまう、いわゆる「落馬」。時速60キロ以上で疾走するサラブレッドからの落馬は大きな危険を伴うことは、競馬ファンなら言わずもがなだろう。

それでも落馬は時に起こってしまう。今回は過去のG1において、ファンに強いインパクトを残した落馬を5つ選定。ただし、落馬を伴わない競走中止や、結果的に予後不良に至った落馬などは除いた。今回は5頭目の紹介。

2023年日本ダービーに出走したドゥラエレーデ
2023年日本ダービーに出走したドゥラエレーデ

⑤2023年・日本ダービー(ドゥラエレーデ)

~テレビ局密着取材の坂井瑠星騎手が……~

 最後は唯一の現役馬ドゥラエレーデだ。2歳暮れに14番人気でホープフルSを制した同馬は、年が明けて海外ダートG2のUAEダービーに出走。そこで2着に入ると、今度は日本ダービーへと駒を進める異例のローテーションを選択した。

 芝とダートで1勝ずつしていた“二刀流”の最大の武器は、先行力と最後まで諦めない勝負根性。そして誰が鞍上を務めても折り合える操縦性だった。

 デビュー7戦目のダービーで7人目のパートナーとして跨ったのは、当時25歳の坂井瑠星騎手。前年の秋華賞を皮切りに、朝日杯FS、フェブラリーSと約4か月の短期間にG1を3勝し、最も乗れる若手騎手として注目される存在となっていた。

 坂井騎手にとって2度目のダービー騎乗。当日はNHK-BS1の『スポーツ×ヒューマン』という密着ドキュメンタリー番組のカメラが坂井騎手の一挙手一投足を追っていた。いや、着順はどうあれ、スタートからゴールまでその騎乗を追いかけるはずだった。

 ところが、発馬直後、ドゥラエレーデが躓くと、坂井騎手はなすすべなく落馬。2歳チャンピオンとともに臨んだ夢のダービーは約1秒で幕を閉じた。

 幸い人馬ともに無事で、坂井騎手は即座に立ち上がり、レースを見守る羽目に……。カラ馬となったドゥラエレーデは、そのままゴールまで馬群の後方を走り続けた。

 その後、坂井騎手はダービー落馬の悔しさを糧にさらなる成長を遂げる。初めて騎手リーディングトップ10入りを果たした2022年の8位から23年は7位へ、そして24年は4位へとステップアップ。今年は戸崎圭太騎手らとの熾烈なリーディング争いを演じている。

 一方のドゥラエレーデは、ダービー後に宝塚記念に挑戦するも10着に敗戦。その後は主戦場をダートに移し、G1でもたびたび上位争いをしている。

【了】

(文●中川大河)

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