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ラインクラフト ~早逝が惜しまれる天才少女。唯一の桜花賞-NHKマイルCの変則二冠達成馬~

text by 中西友馬

ラインクラフト(Rhein Kraft)

マイル、スプリント戦で活躍した早逝の名牝・ラインクラフト。クラシック戦線では桜花賞を制覇するも、距離適性を考慮して、オークスではなくNHKマイルCに挑戦。史上初の桜花賞-NHKマイルC連勝を達成した。変則マイル女王の馬生をふり返る。

RheinKraft

プロフィール

性別 牝馬
エンドスウィープ
マストビーラヴド
生年月日 2002年4月4日
馬主 大澤繁昌
調教師 瀬戸口勉
生産牧場 ノーザンファーム
通算成績 13戦6勝【6-3-2-2】
獲得賞金 5億563万円
主な勝ち鞍 桜花賞(2005年)
NHKマイルカップ(2005年)
受賞歴 なし
産駒成績 産駒デビュー年:なし
通算重賞勝利数:0勝
通算G1勝利数:0勝
代表産駒 なし

短距離戦で活躍した早逝の名牝

 ラインクラフトは、2004年10月に京都競馬場でデビューした。父はダート短距離で活躍したサウスヴィグラスを輩出したエンドスウィープ、母は良血馬ながら現役時代は未勝利に終わったマストビーラヴドであった。レースは好位から楽に抜け出し、5馬身差の圧勝であった。

 2戦目のファンタジーSでも同じように好位抜け出しで4馬身差の快勝。2戦2勝で迎えた阪神JF。ここ2戦の勝ちっぷりから単勝1.5倍の断然人気に推されたが、ショウナンパントル、アンブロワーズとの叩き合いで3着に敗れた。
年が明けて3歳となったラインクラフトは、桜花賞トライアルのFレビューから始動した。前走に続いて激戦となったが、ゴール前の4頭での争いを制して勝利。

 そして迎えた牝馬3冠第1戦の桜花賞。1番人気は3戦3勝のシーザリオで、ラインクラフトは続く2番人気であった。しかし両馬の主戦を努めていた福永騎手はラインクラフトに騎乗し、シーザリオは名古屋競馬の吉田稔騎手となっていた。レースは、先に抜け出したデアリングハートをラインクラフトが競り落としたところに、後方からシーザリオが猛追。それをアタマ差凌いだラインクラフトが1冠目を奪取した。

 1400mだけでなく、マイル戦でも勝利を挙げたラインクラフトだが、牝馬3冠第2戦の優駿牝馬(オークス)は2400m。陣営は距離適性を考え、桜花賞馬としては異例のオークス回避を決断。そして次走に選んだのは、牡馬混合のNHKマイルカップであった。ここでも、ともにしのぎを削ってきたデアリングハートとの牝馬ワンツーを決め、史上初の桜花賞、NHKマイルCの連勝を飾った。

 夏を経て、秋は秋華賞トライアルのローズSから始動。初の2000m戦となった一戦で、早めに抜け出すも最後多少脚いろが鈍ったところをエアメサイアに交わされて2着となった。
 そして迎えた牝馬3冠第3戦の秋華賞。ローズSの結果から、エアメサイアとの一騎打ちムードが高まり、2頭の馬連は1.8倍という圧倒的な人気を集めていた。今回も早めに先頭に立ったラインクラフトが、京都の内回りコースを活かして逃げ切ったかと思ったところにエアメサイアが急追。ゴール前でクビ差交わされて2着となった。

 2000mでエアメサイアに連敗となったラインクラフトは、再びマイル路線へと戻る。古馬との初対戦となったマイルCSではハットトリックの3着。続く阪神牝馬Sでは、デビュー以来初めてハナを切る形となるもアドマイヤグルーヴの4着となり、3歳シーズンを終えた。

 年が明けて4歳初戦は、初の1200m戦となる高松宮記念。抜け出したオレハマッテルゼを懸命に追うも、クビ差及ばず2着。続く、春に移設した阪神牝馬Sでは、昨秋に連敗したエアメサイアらを寄せつけず、3馬身差の快勝。1400m戦では4戦4勝の成績となった。そして、この年から新設されたG1ヴィクトリアマイル。単勝1番人気に推されるも、中団から伸びを欠いて9着に敗れた。

 その後、秋のレースに向けて放牧中に心不全で倒れ、そのまま天国へと旅立った。同世代のライバルであったシーザリオやエアメサイアが、母としてもG1馬や重賞馬を輩出していることから、ラインクラフトの仔を見たかったという声は大きい。それだけ競馬ファンに愛された馬であった。

(文●中西友馬)

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