どっちでもかかってこいや!“二刀流”の最強名馬(3)世界的名手デットーリを迎えての復活劇
大谷翔平選手の活躍もあり、近年「二刀流」という言葉を耳にする機会が増えた。もとは剣術の用語だが、今では「かけもち」や「二足のわらじ」といった意味でも使われている。その二刀流は、競馬界にも存在する。芝とダート、両方で活躍した馬たちは、まさにその体現者だ。今回は、芝とダートのG1を制覇した名馬5頭を紹介する。今回は3頭目。
③イーグルカフェ
性別:牡馬
父:Gulch
母:Net Dancer
生年月日:1997年2月10日
毛色:鹿毛
調教師:小島太(美浦)
800mの通過が45.9秒という超ハイペースで進んだNHKマイルCを中団から勝ち切ったイーグルカフェ。だが、その後はしばらく勝ち星に見放された。もちろん、中間は何度か馬券圏内に入線していたように、惜しい競馬がなかったわけではない。勝利を掴むためにダートも走り、ドバイにも飛び、とにかく懸命に走った。
そしてその苦闘が報われたか、イーグルカフェは5歳の夏、七夕賞で実に2年2か月ぶりの勝利を挙げる。秋にはマンハッタンカフェの凱旋門賞遠征に帯同し、フランスの重賞で3着。着実に復調の気配はのぞかせていた。
欧州から帰国したイーグルカフェは、その初戦にJCダートを選択。当時は東京競馬場の改修工事により、中山ダート1800mで開催されていた。2100m以上だとやや長い感じもあったイーグルカフェにとっては願ってもない短縮で、しかも鞍上には世界的名手のランフランコ・デットーリを迎えての一戦。ここまであきらめず、ひたむきに走ってきた彼に対して、良い風が吹いているようにも思えた。
レースはアルアランが引っ張り、1000m通過は61.3秒というスローペースで進む。その流れを見切ったか、中団にいたイーグルカフェは3コーナーを前にして上がっていき、直線入り口では3番手まで押し上げる。そして直線、内ラチ沿いが空いた瞬間に、デットーリ騎手はそこへ相棒を誘導した。それに応えてイーグルカフェは末脚を爆発させ、後続を抑え切ってゴールイン。
2年ぶりにG1タイトルを見事に掴み取って見せたその姿は、ともにフランスへ帯同し、怪我で引退が決まった僚馬・マンハッタンカフェの無念と、これまでイーグルカフェに続いていた惜敗の鬱憤、両方を晴らしたように映る見事な勝利であった。
【了】
(文●小早川涼風)
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