2500mでも足りない…?伝説の“スタミナおばけ”(5)恐るべき3連覇…群を抜いていた名馬
近年はスタミナ自慢の馬たちよりスピードに秀でた馬が増え、真に長距離戦を得意とする馬は年々減っているように感じられる。それでもなお、長距離戦は、人馬が駆け引きを重ね、持てる力を余すことなく発揮する舞台として、魅力に満ちている。今回は、そんな長距離路線で真価を発揮した「真のステイヤー」5頭を紹介する。今回は5頭目。
⑤アルバート
ここまで紹介した4頭は、全てG1競走での勝利があるという共通点がある。だが、アルバートは今回取り上げた馬たちの中で唯一G1タイトルを手にしていない。しかし、史上最強のステイヤーという枠組みならば、この馬を思い出す人も少なくないのではないだろうか。
デビューからしばらくはマイルから中距離を中心に使われていたアルバートだったが、4歳の秋に初の2400m戦を勝利したことで長距離路線にシフトチェンジ。条件戦を連勝して臨んだステイヤーズSでR.ムーア騎手を背に初の重賞制覇を遂げた。
翌年、再びムーア騎手を迎えてこのレースをあっさり連覇すると、年明けのダイヤモンドSも勝利。エアダブリンやフォゲッタブルなどに続く、年を跨いだ超・長距離重賞の連勝を飾った。そして年末、みたびムーア騎手と共にステイヤーズSに出走したアルバートは、あっさりレース史上初の3連覇を成し遂げた。
この3回のアルバートの勝利は、全て上り最速を記録した。加えてうち2年はスタートで出負けし、後方からの巻き返しを強いられたうえでの1着だった。スタミナが試されるこの距離での戦いにおいて、バテバテになってやっと勝ち切ったというような内容のものはひとつもない。これが彼の強さをより際立たせているのではないのだろうか。
ステイヤーズSの3連覇がかかっていた2017年、メルボルンカップへの登録があったアルバート。中間のオールカマーで敗戦したことに加え、オーストラリアへの直行便が無くなったことで同レースは回避したが、仮にこのレースに出走していたらどうなっていたのだろうか。
馬場状態も何もかもが違うため「もしも」の話でしかないが、この年、ステイヤーズSにおける3200m時点での通過タイムは3分19秒5だった。一方、メルボルンカップの優勝タイムは3分21秒19。単純なタイム比較ではあるが、もし出走が叶っていたのなら、デルタブルース以来となるメルボルンカップ制覇というビッグニュースを日本のファンにアルバートは届けていたのかもしれない。そう思わせるほどに、彼のステイヤーぶりは群を抜いていた。
【了】
(文●小早川涼風)
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