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無謀か、それとも希望か…日本ダービーに挑戦した牝馬たち(4)それだけの器だ…国枝栄調教師の悲願達成へ

text by 勝木淳

ダービーの出走条件は「3歳牡・牝、未出走、未勝利馬除く」。優秀な種牡馬選定という命題のため、セン馬は出走できないが、その血を後世に残せる牝馬には門戸が開かれている。だが、グレード制導入後の1984年以降、ダービーに出走した牝馬は5頭のみである。今回は、生涯一度の舞台にダービーを選んだ牝馬の物語を振り返る。今回は4頭目。

2021年桜花賞2着サトノレイナス
2021年桜花賞2着サトノレイナス

④2021年 サトノレイナス

 
父:ディープインパクト
母:バラダセール
生年月日:2018年2月26日
毛色:鹿毛
調教師:国枝栄(美浦)

 アルゼンチン3歳牝馬チャンピオンのバラダセールを母に持つサトノフラッグは、セレクトセール当歳で1億6500万円(税抜)という高額で取引された4番仔。弥生賞ディープインパクト記念を制し、クラシックでは三冠レースで5、11、3着と健闘した。その妹サトノレイナスも、当歳時に1億円(税抜)の値がついた超良血馬である。

 6月1週目の新馬を勝ち、秋はサフラン賞と無敗で挑んだ阪神ジュベナイルフィリーズはソダシの2着。無敗記録こそ途絶えたものの、春クラシックに向け、順調な滑り出しを切った。なにせソダシとの差はわずかハナ差。互角の評価だった。

 年明けを休養にあて、迎えた桜花賞。ファンはサトノレイナスを1番人気に支持した。しかし好ダッシュを決めるソダシとは対照的に、大外枠のサトノレイナスは序盤で行き脚がつかず、後方から。猛然と追い込むもソダシにクビ差及ばなかった。おそらく陣営は桜花賞の序盤の走りから、距離延長に対して自信を深めたのではないか。

 さらに同じ国枝栄厩舎で桜花賞4着アカイトリノムスメの存在も大きかった。国枝厩舎のステータスを押し上げた牝馬三冠馬アパパネの娘とサトノレイナス。どちらにもルメール騎手を乗せたい。そう考えるのは自然なことだ。その選択とサトノレイナスのスケールを鑑み、陣営はダービー挑戦を決めた。それも国枝調教師が2歳時に三冠に出走登録をしており、あらかじめ頭の隅にあったプランでもある。つまり、サトノレイナスに対し、国枝調教師はそれだけの器であると評価していたのだ。

 8年ぶりの牝馬によるダービー挑戦は話題になり、ファンも2番人気に推した。皐月賞馬エフフォーリアが1番人気も、3番人気グレートマジシャン、4番人気シャフリヤールと皐月賞不出走馬が上位人気を形成する不思議な図式だった。

 超スローで流れたレースは後半1000mから一気にペースアップするロングスパート合戦になった。目論見通り距離が延びて流れに乗れたサトノレイナスはロングスパート戦の口火を切った。3コーナーで外から2番手に並び、早め先頭の形から押し切りを狙った。意図した形ではなかったが、牡馬相手に正攻法で見せ場をつくり、5着。直線半ば、ウオッカの再来を夢みたファンも多かった。

【了】

(文●勝木淳)

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