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絶大な影響力!サンデーサイレンス奇跡の血量(2)無双の3歳から4歳で暗転…ピークが早くに終わった原因は

text by 小早川涼風

競走馬の血統には、偶然とは思えないほど劇的な能力の継承が存在する。「奇跡の血量」と呼ばれるインブリードもそのひとつだろう。今回は、サンデーサイレンスの奇跡の血量を持っており、さらにエピファネイアまたはリオンディーズを父に持つGⅠ馬から5頭ピックアップ。血統表を見ながら特徴をじっくりと紹介する。今回は2頭目。

奇跡の血量とは?

インブリード(近親交配)の際に使われる言葉で、3代前と4代前に同一の馬が存在することで発生するクロスのことを「奇跡の血量」と呼ぶ。日本ではトキノミノルの活躍がこの血統理論に着目されたきっかけといわれており、近年でもオルフェーヴルやレイデオロなど、奇跡の血量を持つ名馬は多い。

2021年有馬記念を制したエフフォーリア
2021年有馬記念を制したエフフォーリア

②エフフォーリア

父:エピファネイア
母:ケイティーズハート
生年月日:2018年3月10日
性別:牡馬
毛色:鹿毛
調教師:鹿戸雄一(美浦)

エフフォーリアの血統表
エフフォーリアの血統表

 2021年、無敗で皐月賞を制覇したエフフォーリア。鞍上の横山武史騎手はこれが初のG1制覇となった。ダービーこそハナ差の2着に惜敗したが、秋には先輩三冠馬のコントレイルを下して天皇賞・秋を勝利し、続く有馬記念も快勝。3歳にして年度代表馬に選ばれた。

 エフフォーリアは瞬発力に秀でたサンデーサイレンスの奇跡の血量に、速力が引き出されるHail to Reasonの5×5というスピード型のクロスが組まれている。先述したデアリングタクトと血統構成に大きな差はないが、彼女にあったNorthern Dancerの5×5を内包していないのが違いといえるだろう。

 このことから、スピードが重視されている近代の日本競馬に適応したクロスではあるが、その分ピークに達するのが早く、古馬となってからの成長力にはやや疑問の出る血統構成とも取れる。エフフォーリアが3歳で中距離路線の頂点に立ちながら、4歳以降は精彩を欠く走りを繰り返していたのには、もしかしたらこのインブリードの影響が少なからずあったのかもしれない。

 ただ、彼の子供たちはそのスピードと仕上がりの早さを受け継ぐ可能性は強い。スタッドインした初年度から198頭に種付けし、うち125頭が血統登録されているエフフォーリア。交配相手にはリスグラシューの母であるリリサイドや、チェルヴィニアの母チェッキーノの名もあり、初年度からかなりの良血馬が揃っている。彼のスピードと類稀なる瞬発力を受け継ぐ産駒の走りは、果たして見られるだろうか。

【了】

(文●小早川涼風

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