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【遅咲きのGⅠ馬 5選】 「いつか勝つ日を夢見て…」何度でも立ち上がった勇姿に涙腺崩壊…

text by 小早川涼風

近年の競馬界では、少ないキャリアでG1を制し、瞬く間にスター街道を駆け抜けていく馬たちも少なくない。一方で最初から華々しい活躍をみせていたわけではなく、裏街道や条件戦で地道に実力を積み重ねたのち、G1のタイトルを獲得した馬もいる。今回はキャリアを積み、悲願のG1初制覇を成し遂げた5頭を紹介する。

2001年香港ヴァーズを制したステイゴールド
2001年香港ヴァーズを制したステイゴールド

①ステイゴールド

父:サンデーサイレンス
母:ゴールデンサッシュ
生年月日:1994年3月24日
性別:牡馬
毛色:黒鹿毛
調教師:池江泰郎(栗東)
戦績:50戦7勝 [7-12-8-23]

 ステイゴールドの戦績は50戦7勝2着12回3着8回。うち重賞レースでの2,3着は36回の出走中14回で、4割近くは馬券圏内に入線していた。

 そんな彼がデビューしたのは2歳(現行年齢)の12月であったが、勝ち上がったのは3歳の5月で6戦目。新馬戦で騎乗したオリビエ・ペリエ騎手が「ちょっと難しい馬だけど」と前置きしつつ「力がある」と認めたほどの実力はあったが、3戦目では熊沢騎手を振り落とすなど気性面の脆さを覗かせていた。ゆえに、ここまで勝ち上がりに時間がかかったのかもしれない。だが、初勝利を挙げた後は最後の一冠である菊花賞に向けて順調に調整され、9月頭の札幌で行われた阿寒湖特別を快勝。勇躍、菊花賞の惑星候補として路線に駒を進めることとなる。

 しかし、ここから彼は3年近く勝ち星に見放された。スペシャルウィークやエアグルーヴ、グラスワンダーといった時代を代表する強豪たち相手に好走はするも、どうしても重賞のタイトルには手が届かない。にもかかわらず、彼の獲得賞金はおよそ4億6000万円にものぼっていた。これは同世代のG1ホースであるサイレンススズカが生涯で獲得した賞金に匹敵する額である。これほどまでに活躍を遂げながら、いまだ重賞勝ちはゼロのステイゴールドが初のタイトルを掴む日を、ファンは待ち望んでいた。

 そして2000年5月20日、東京競馬場で行われたG2・目黒記念で、ステイゴールドはついに1着でゴール坂を駆け抜ける。これが29戦ぶりの勝利となった同馬に、府中のスタンドだけではなく、全国各地から万雷の拍手と祝福の声が浴びせられた。

 翌年、日経新春杯を制して臨んだドバイシーマクラシックでは、のちにこの年のヨーロッパ年度代表馬に輝くファンタスティックライトを捉え、異国の地で重賞を制覇する。その後は国内で4戦し勝ちを挙げることはできなかったが、年末には再び海外へ遠征し、引退レースとなる香港ヴァーズへ出走した。直線入り口では、先頭のエクラールに5馬身近い差をつけられながら一完歩ずつその差を縮め、最後の最後にハナ差だけ交わして成し遂げたG1初制覇。この瞬間は、今も伝説のラストランとしてファンの間で語り継がれている。

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