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革命級の調教…!日本競馬を変えた坂路の申し子(5)快速娘は美浦で異色の坂路メイン…新時代の調教に注目

text by 中川大河

平成の競馬界は「西高東低」といわれた。関東のG1であっても、関西馬が活躍することは珍しくなかった。一方、昭和後期は「東高西低」で、ミスターシービーやシンボリルドルフを含む関東馬が、1983年から1990年までダービー8連覇を達成した。この流れを変えた一つの要因が、1985年栗東に整備された坂路コースといわれている。坂路調教が関西馬の飛躍を大いに支えたのだ。今回は、そんな“坂路”に着目。坂路調教で鍛えられた名馬5頭を時系列で紹介する。今回は5頭目。

2025年桜花賞を制したエンブロイダリー
2025年桜花賞を制したエンブロイダリー

⑤エンブロイダリー

~快速娘は美浦で異色の坂路メイン~

 ここまで名前が挙がった4頭はすべて牡馬であり、関西馬だ。最後は、唯一の現役馬で、関東馬、そして牝馬でもあるこの馬をチョイスした。それが、今年の桜花賞をJ.モレイラ騎手とのコンビで制したエンブロイダリー(美浦・森一誠厩舎)である。

 栗東では坂路がメインの厩舎が珍しくないが、美浦はウッドコースが中心の厩舎がほとんどだった。ところが、2023年に栗東をしのぐ高低差33mの坂路コースが誕生。若手を中心にこの新坂路を活用する調教師も目立つようになっている。そんな一人が、開業2年目の森一誠調教師だ。

 森一誠厩舎はウッドコースを併用するものの、あくまでもメインは坂路。そのこだわりは栗東の森(秀行)厩舎を彷彿とさせるほどだ。

 特筆すべきところは、単に坂路を活用しているだけではなく、結果も出しているところ。桜花賞馬エンブロイダリーは2歳夏の入厩時から坂路を中心にじっくり乗り込み、桜花賞直前の栗東滞在中もあくまでも坂路にこだわって仕上げられた。また、エンブロイダリー以外にも同世代のヴィンセンシオも坂路で鍛え抜き、牡馬クラシック路線に乗せている。

 エンブロイダリーはオークスこそ距離の壁に泣いたが、この秋は秋華賞で牝馬二冠を狙いにくるだろう。坂路主体のポリシーを貫き、オークスの鬱憤を晴らせるのかに注目が集まる。

【了】

(文●中川大河)

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