メジロマックイーン（Mejiro McQueen）

競馬界の名門メジロ一族。そのなかでも芦毛の最強ステイヤーとして名を馳せたのが「名優」と呼ばれたメジロマックイーンである。一族の期待に応え、悲願の父子三代天皇賞制覇という偉業を達成した功績は、今もなお語り継がれている。

プロフィール

～最強ステイヤーと名高い名優～

　メジロマックイーンは、父・メジロティターン、母・メジロオーロラの間に産まれる。デビューは4歳2月と遅れたが、条件戦を勝ち上がり初重賞挑戦で菊花賞出走にこぎつけた。オッズは同門の出世頭メジロライアンがいたこともあり、単勝4番人気であった。
スタートから先行し、最終コーナーに差し掛かる頃には先頭に並びかけ、メジロライアンには2馬身半以上の差をつけて勝利した。初重賞でGⅠ勝利を果たし、芦毛の最強ステイヤー伝説が幕を上げた。

　次はメジロ一族の大目標である天皇賞（春）。鞍上に武豊騎手を迎え、単勝1.7倍の1番人気に支持された。レースはいつも通りの先行策で進め、最後の直線で抜け出すと後続を放したまま勝利した。祖父･メジロアサマ、父･メジロティターンに続いて史上初の父子三代天皇賞制覇という偉業を成し遂げた。

　続く宝塚記念では、惜しくもメジロライアンの2着に敗れる。その後は休養をはさみ、天皇賞の春秋制覇を目指した。レースでは、後続を大きく引き離し1着で入線するも、第2コーナーでの斜行によりまさかの18着降着。次のジャパンカップは4着、有馬記念は1馬身半差の2着と、なかなか勝ちきれないレースが続いた。

　翌年、再起をかけ連覇がかかる天皇賞（春）へと向かった。ここで待っていたのは無敗の二冠馬トウカイテイオー。”父子三代天皇賞制覇”のメジロマックイーンと”父子ダービー制覇”のトウカイテイオーという、意地とプライドがぶつかり合う戦いは「世紀の対決」と評され注目を集めた。レースでは中団待機のメジロマックイーンをトウカイテイオーがぴったりマークするかたちで進んだ。2周目の第3コーナーでメジロマックイーンが先に仕掛けると、それに反応するトウカイテイオー。直線の入り口で共に先頭に立ち、一騎打ちになるか思われたが、トウカイテイオーが失速した。メジロマックイーンは脅威のスタミナを見せ、圧勝で決着が付いた。“世紀の対決”を制し、天皇賞（春）の連覇を果たした。

　その後は調教中に骨折が判明し、長く苦しい1年近くの休養を余儀なくされた。翌年春、復帰初戦となる産経大阪杯では、コースレコードで勝利し完全復活を遂げた。勢いそのまま天皇賞（春）3連覇へ向かったが、前年の菊花賞馬ライスシャワーに阻まれ2着に終わった。
次の宝塚記念ではいつものごとく好位でレースを進め、直線でしっかり先頭をとらえ完勝。この勝利で一流のスピードも持っていることを証明した。その年、秋の目標にしたのが前年降着となった天皇賞（秋）である。だが、前哨戦の京都大賞典でレコード勝利を収めたあと、左前脚の繋靱帯炎を発症し引退を余儀なくされた。こうして芦毛の最強ステイヤー伝説は幕を閉じたのだった。

　引退後、種牡馬としては優秀な産駒を輩出するには至らなかったが、ステイゴールドと掛け合わせたことによって、その血が開花した。「黄金配合」と称されドリームジャーニー、オルフェーブル、ゴールドシップ、といったGⅠを制する名馬を数々輩出する。”母の父”としてその血は途切れることなく受け継がれることとなった。名優の舞台劇はまだ終わることをしらない。

※本文中の馬齢は当時の表記

【了】

（文●沼崎英斗）

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