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スティルインラブ 〜トリプルティアラに愛されたシンデレラにかけられた魔法〜

text by 中西友馬

スティルインラブ(Still in Love)

スティルインラブ。桜花賞、優駿牝馬、秋華賞で牝馬三冠を達成した名牝である。しかし、秋華賞以降は勝ち星を挙げることができず引退、その後は繁殖牝馬としても活躍が期待されたが、2007年に腸重積で早逝。牝馬三冠に愛されたシンデレラストーリーは、多くのファンに記憶されている。

Still in Love

プロフィール

性別 牝馬
サンデーサイレンス
ブラダマンテ
生年月日 2000年5月2日
馬主 ノースヒルズマネジメント
調教師 松元省一
生産牧場 下河辺牧場
通算成績 16戦5勝【5-2-1-8】
獲得賞金 4億3777万円
主な勝ち鞍 牝馬3冠(2003年)
受賞歴 最優秀3歳牝馬(2003年)
産駒成績 産駒デビュー年:2010年
通算重賞勝利数:0勝
通算G1勝利数:0勝
代表産駒 なし

牝馬三冠を駆け抜けたシンデレラ

 スティルインラブは2002年11月に、阪神競馬場でデビューした。父は大種牡馬サンデーサイレンス、母はアメリカ産馬のブラダマンテで、半兄にはラジオたんぱ賞(現ラジオNIKKEI賞)を制したビッグバイアモンのいる血統であった。レースは2番手から抜け出して3馬身半差の快勝。見事にデビュー勝ちを飾った。

 2戦目は、年が明けて3歳となって迎えた紅梅S。ここでは中団から上がり最速の脚で差し切り、連勝を飾った。3戦目は桜花賞トライアルのチューリップ賞。単勝1.7倍の1番人気に推されたが、オースミハルカにクビ差競り負けての2着となった。

 迎えた、牝馬3冠第1戦の桜花賞。1番人気は牡馬相手に3戦3勝で桜花賞に乗り込んできた、超良血馬アドマイヤグルーヴ。スティルインラブは同じ単勝3.5倍ながら、僅差の2番人気であった。レースは初のマイル戦に加えて、出遅れが響いて後方からとなったアドマイヤグルーヴに対して、好位で流れに乗ったスティルインラブが抜け出して勝利。G1初勝利を飾るとともに、デビューから手綱を執る幸騎手は、初のG1制覇となった。

 続く優駿牝馬(オークス)でも、1番人気はアドマイヤグルーヴであった。桜花賞での末脚から距離延長はプラスだと考えられていたことに加え、スティルインラブは1600mまでしか経験がないことから、アドマイヤグルーヴの単勝は1.7倍という抜けた1番人気になっていた。レースは中団にスティルインラブ、再び出遅れたアドマイヤグルーヴは後方からの競馬。4コーナーでも最後方に位置していたアドマイヤグルーヴに対して、中団から外に出して伸びてきたスティルインラブが差し切り勝ちで2冠を達成した。アドマイヤグルーヴは伸びを欠いて7着に敗れた。

 夏を経て、秋華賞トライアルのローズSから始動。3度目の対戦にして初めて、アドマイヤグルーヴを抑えて1番人気に推されたが、+22キロの影響か伸び切れず、アドマイヤグルーヴの5着に敗れた。

そして迎えた、牝馬3冠最終戦の秋華賞ローズSの敗戦によって、再び1番人気はアドマイヤグルーヴに譲る形となった。レースは中団から進めたスティルインラブと、それをぴったりマークするアドマイヤグルーヴという形で進んだ。先に動いたスティルインラブを目標にアドマイヤグルーヴが伸びるが、最後まで抜かせなかったスティルインラブが勝利。史上2頭目となる牝馬3冠を達成した。

 その後は、エリザベス女王杯でアドマイヤグルーヴと再び対決。古馬相手でも、ライバル同士の2頭が併せ馬で伸びてきての叩き合いとなるが、ハナ差敗れての2着となった。

 年が明けて、4歳となったスティルインラブは金鯱賞から始動したが、中団から伸び切れず、5着だったアドマイヤグルーヴにも先着を許して8着に敗れた。その後は、宝塚記念で8着、北九州記念で12着、府中牝馬Sで3着と、4歳シーズンを勝利のない状況で迎えたエリザベス女王杯。3冠馬の復活を期待して3番人気に推されるも、勝ったアドマイヤグルーヴからは大きく離された9着に敗れた。

 年が明けて5歳シーズンも、金鯱賞からスタート。4着のアドマイヤグルーヴに対して、スティルインラブは6着。続く宝塚記念も、8着のアドマイヤグルーヴに対して、スティルインラブは9着となる。
夏を経て、府中牝馬Sに出走するも最下位の17着に敗れ、エリザベス女王杯を前に引退が発表された。

 引退後は繁殖牝馬となり、父キングカメハメハの初仔を出産も、2007年に腸重積でスティルインラブは天国へと旅立った。牝馬3冠達成後は、1度も勝利することができなかったスティルインラブ。また、ライバルのアドマイヤグルーヴとは9戦して、牝馬3冠の3戦以外は全て先着されていた。まさに牝馬3冠を獲るために生まれてきたような馬であった。

(文●中西友馬)

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