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最後の晴れ舞台…ダービー優勝が国内ラストランの名馬(5)単勝93.1倍から大勝利も…凱旋門前に悲劇の引退

text by 中西友馬

 全てのホースマンの夢を乗せて行われる、日本ダービー(東京優駿)。競走馬にとっても、一生で一度しかその舞台に立てない、まさに晴れ舞台である。
 そこで今回は、そのダービーで一世一代の走りを見せた結果、ダービーが(国内)ラストランとなってしまった勝ち馬に注目。5頭をピックアップし、順に紹介していく。今回は5頭目。

2019年ダービーを制したロジャーバローズ
2019年ダービーを制したロジャーバローズ

⑤2019年(勝ち馬ロジャーバローズ)

 ディープブリランテのハナ差Vから7年が経った、2019年のダービー。

 この年断然の1番人気(単勝オッズ1.6倍)に推されていたのが、ディープインパクト以来、14年ぶりとなる無敗の2冠馬を目指すサートゥルナーリア。ここまで4戦4勝で、前走の皐月賞も人気に応えて勝利と、戦績に関しては文句なし。

 ただひとつ懸念材料とされていたのが、皐月賞で手綱を執ったルメール騎手の騎乗停止による、乗り替わり。乗り替わったレーン騎手ももちろんトップジョッキーであるが、1985年のシリウスシンボリを最後に33年間乗り替わりの馬はダービーを勝てていなかった。そのため、無敗の2冠馬を目指す戦いは、ダービーのジンクスとの戦いともなっていた。

 続く2番人気(単勝オッズ4.3倍)は、皐月賞2着のヴェロックス。皐月賞はサートゥルナーリアとアタマ差の惜敗であり、逆転に燃えていた。そして3番人気(単勝オッズ4.7倍)が、皐月賞ではヴェロックスからハナ差3着であったダノンキングリー。皐月賞で接戦を演じた3頭が上位人気を集める形で、発走を迎えた。

 レースは、リオンリオンがハナを切り、上位人気3頭の中では好位につけたダノンキングリーが一番前。ヴェロックスは中団前から進め、サートゥルナーリアは中団後ろの外めを追走していた。大逃げを打つ形となったリオンリオンが刻んだ前半1000mの通過は、57秒8のハイペース。ポツンと離れた2番手がロジャーバローズとなり、その後ろの集団の先頭がダノンキングリーという隊列で4角を回り、最後の直線へと向かう。

 直線に入ると、さすがに苦しくなったリオンリオンを交わして、残り400mを切ったところでロジャーバローズが先頭。その外からダノンキングリーが並びかけ、さらに離れた大外からサートゥルナーリアがまとめて交わす勢いに見えたが、残り200mからは脚いろが鈍り、なかなか前との差が詰まらない。

 ゴール前はロジャーバローズとダノンキングリーの争いに絞られ、強靭な粘りを見せたロジャーバローズが、クビ差振り切って勝利。ダノンキングリーが2着となり、苦しくなったサートゥルナーリアを交わしたヴェロックスが2馬身半差の3着。サートゥルナーリアはさらに半馬身差の4着に敗れた。

 勝ったロジャーバローズは、単勝オッズ93.1倍の12番人気という伏兵評価を覆しての勝利。レース後、秋は菊花賞ではなくフランスの凱旋門賞への挑戦が発表された。

 しかし、放牧を挟んで帰厩後、凱旋門賞への調整過程で屈腱炎が判明。現役を引退し、種牡馬入りすることとなった。

 ダービーは、ハイペースを2番手で追走してそのまま押し切る強い競馬。その無尽蔵のスタミナを、ぜひとも凱旋門賞の舞台で見てみたかった。

【了】

(文●中西友馬

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