HOME » コラム » レジェンドホース名鑑 » シーザリオ 〜繁殖としても歴史に名を残す名牝は、競走馬としてもスケールが違った〜

シーザリオ 〜繁殖としても歴史に名を残す名牝は、競走馬としてもスケールが違った〜

text by 中西友馬

シーザリオ(Cesario)

日本の優駿牝馬(オークス)制覇に続き、米・オークスを圧勝。日本調教馬初の米G1勝利という歴史的快挙を成し遂げたシーザリオは卓越した名牝である。ケガで無念の現役引退後も繁殖牝馬として3頭のG1馬を輩出し、その気高い血脈は次世代の競馬界に大きな影響を与え続けている。

Cesario

プロフィール

性別 牝馬
スペシャルウィーク
キロフプリミエール
生年月日 2002年3月31日
馬主 キャロットファーム
調教師 角居勝彦
生産牧場 ノーザンファーム
通算成績 6戦5勝【5-1-0-0】
獲得賞金 2億2829万円
主な勝ち鞍 優駿牝馬(2005年)
アメリカンオークス(2005年)
受賞歴 最優秀3歳牝馬(2005年)
最優秀父内国産馬(2005年)
産駒成績 産駒デビュー年:2010年
通算重賞勝利数:9勝
通算G1勝利数:5勝
代表産駒 エピファネイア(2014年ジャパンカップ)
サートゥルナーリア(2019年皐月賞)
リオンディーズ(2015年朝日杯FS)

“二大陸を制した女王”と讃えられた国際的名牝

 シーザリオは、2004年12月に阪神競馬場でデビューした。父はダービー馬スペシャルウィーク、母のキロフプリミエールはイギリス産馬で、アメリカ芝中距離のG3を勝っている馬であった。レースは好位から上がり最速の脚で抜け出して勝利。ゴールに向かって加速しているラップを楽に差し切り、初戦から能力の片鱗を見せた。

 2戦目は、年が明けて3歳となった寒竹賞。400mの距離延長でも折り合って好位から抜け出すと、後の重賞3勝馬アドマイヤフジの追撃を抑えて勝利。ともに牡馬相手に連勝を飾った。
3戦目は桜花賞トライアルではなく、フラワーCを選択した。単勝1.4倍の圧倒的な支持に応えて、2馬身半差の快勝。デビューからの3連勝で、重賞初制覇を飾った。

 そして迎えた、牝馬三冠第1戦の桜花賞。デビューからの3戦で手綱を執った福永騎手は、フィリーズレビュー勝ち馬のラインクラフトに騎乗。シーザリオには、名古屋競馬所属の吉田稔騎手が騎乗した。短めの距離に適性のあるラインクラフト、長めの距離に適性のあるシーザリオ。今後は別々の路線を進むであろう両馬の主戦を福永騎手が務められるよう、今回限りの代打騎乗という意味合いもある乗り替わりであった。レースは今までと違って中団からの競馬となったシーザリオ。エンジンがかかってからは鋭く伸びてきたが、ラインクラフトにアタマ差及ばず2着に敗れ、デビューからの連勝は3でストップした。

 シーザリオの次走は、牝馬3冠第2戦の優駿牝馬(オークス)。ラインクラフトが距離適性の面から、次走にNHKマイルカップを選択したことにより、再び福永騎手とのコンビが復活。最大のライバル不在により、単勝1.5倍という圧倒的な支持を集めていた。レースはスローペースで進む中、行き脚がつかず桜花賞以上に後ろの位置どりとなったが、直線では大外を伸びてまとめて差し切ってみせた。

 日本のオークスを制したシーザリオの次走は、アメリカンオークスに定められた。共に遠征予定であった、オークス3着馬ディアデラノビアが怪我で回避し、シーザリオ1頭での遠征となった。レースは、大外枠から好スタートを決めて3番手を追走すると、早めに先頭に立って4馬身差の圧勝。日本調教馬初となる米G1勝利の快挙を達成するとともに、日米オークス制覇も果たした。

 しかし帰国後に繋靭帯炎を発症。復帰に向けて調整されていたが、再発が発覚し、現役引退が発表された。

 引退後は繁殖牝馬として活躍。第3仔のエピファネイア(父シンボリクリスエス)を筆頭に、3頭のG1馬を輩出。2021年に天国へと旅立ったが、3頭のG1馬はいずれも種牡馬入り。現役時代のインパクトもさることながら、繁殖牝馬としても超一流の成績を残した名馬であった。

(文●中西友馬)

1 2