ドラマ製造工場・淀3200m決戦──GⅠ初制覇が天皇賞(春)の馬 5選
京都競馬場・芝3200mという、特殊ともいえる条件で行われる天皇賞(春)。この舞台では、各馬の適性を見極めることが容易ではなく、過去には大波乱となることが幾度もあった。そこで今回は、天皇賞(春)がG1初制覇であった馬たちの中から、5頭をピックアップ。悲願のG1初制覇となったレースを、プレイバックしていく。
①1998年(勝ち馬メジロブライト)
最初に取り上げるのは、1998年の天皇賞(春)。この年は単勝オッズ10倍以下の馬が2頭のみで、完全な一騎打ちムードであった。
1番人気(単勝オッズ2.0倍)は、シルクジャスティス。前年の牡馬クラシックでは無冠に終わったものの、古馬相手の有馬記念でG1初制覇。5歳(現4歳)初戦の阪神大賞典では、同期のメジロブライトにハナ差敗れたが、1キロ重かった斤量が同斤となり、逆転が期待されていた。
続く2番人気(単勝オッズ2.3倍)は、そのメジロブライト。こちらも前年の牡馬クラシックでは、常に人気を背負いながら惜敗。さらには、同期のシルクジャスティスにG1初制覇も先を越されていた。しかし、前出の阪神大賞典では1キロもらいながらも、接戦をものにして本番へと向かっていた。この2頭の馬連は2.0倍という、まさに一本かぶりのオッズを示したまま、発走を迎えた。
レースは、阪神大賞典と同じようにシルクジャスティスが好位につけ、メジロブライトがそれをすぐ後ろで見る形。しかし、外へと持ち出したメジロブライトは、2周目の向正面でシルクジャスティスを交わしてその前へと出る。
そして直線に入ると、内をソツなく立ち回ってシルクジャスティスが抜け出しを図るが、離れた外を伸びたメジロブライトの脚いろがそれを上回る。一気に突き離したメジロブライトが、2馬身差の勝利。逆にシルクジャスティスは最後で力尽き、ステイゴールドとローゼンカバリーにも交わされて4着に敗れた。
勝ったメジロブライトは、重賞4連勝で悲願のG1初制覇。その後、G1では惜敗が続き、結局G1タイトルは、この天皇賞(春)1つにとどまった。しかし、サンデーサイレンスをはじめとして、ブライアンズタイムやトニービンなど、輸入種牡馬が猛威をふるい始めたこの時代。その中で、父メジロライアンのメジロブライトは、「父内国産馬の星」と言っても過言ではない存在であった。